柏木陽介が語る引退の経緯、浦和での規律違反...「5年前くらいから(サッカーが)楽しいって感覚がなくなっていた」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・構成 text by Asada Masaki

――引退発表からシーズン最終戦までのおよそ1カ月。どんな気持ちで過ごしましたか。

「特に変わってはいなかったっていうか、ホントいつもどおりに過ごしたって感じでした」

――引退の決断は難しいものでしたか。

「いや、難しくなかったですね(笑)」

――いつ頃から引退を考えていたのですか。

「(昨年10月に右足の)アキレス腱をきった時かな。その時に、『もう来年は動けないかもしれない。ここから(トップコンディションに)戻していくのは大変だろうな』というのは頭にありました。

 でも、だからといって、別にネガティブな引退ではなくて、(ケガをしたことで)『もうそういう時なんじゃないか』と思わせてくれたというか。僕はこれまで、何か起きたことにはすべて意味があるんだととらえて、その出来事からいろんなことを学んできた。

 だから、アキレス腱をきった時も、(試合に出られなくなることで)自分の持っているものをこのチームに還元できなくなるのは残念だったけど、自分自身のことについては悲しいとか、そういう感情はなく、笑っていたからね。『そういうことなのかな』みたいな気持ちでした」

――だとすると、今季ケガから復帰したのは、ある意味で"引退するための復帰"だった。

「そうですね。自分がまだどれだけできるのか(を試したかった)というのもありましたけど、復帰の過程というのがすごく大事だと思っていたので、メンタル的なことも含めて、自分がチーム内でどう振る舞っていくか。自分のなかでは、そこを結構大事にした期間でもあったかな」

――復帰してみて、「やっぱり現役を続けたいな」とは思いませんでしたか。

「(ケガをして)試合をスタンドから見ている時には、『これだけのサポーターがいるなかでピッチに立てるっていいな』という気持ちにはなりましたけど......、でも、それくらいかな。それよりも、(現役生活の)最後にもう一度ピッチに立ってできるだけのプレーをして、観ているみんなに少しでも何かが伝えられたらいいな、という思いだけでした」

――ラストシーズンを終えた今の気分は?

「もう、ホンマにスッキリしているし、気持ちはもう次に向かっている。これからが楽しみやなっていう感じです。

 もう自分のなかではやりきったし、みんなで楽しくボールを蹴るくらいならいいけど、もう練習したいとは思わない。あの恐怖のキャンプがないと思うと最高です(笑)」

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