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FC町田ゼルビアのサッカーはJ1でも通用するか シンプルな戦い方を高い強度で徹底した黒田剛監督の手腕 (5ページ目)

  • 篠 幸彦●文 text by Shino Yukihiko

【来季J1仕様にクオリティを上げる】

 もう一つはエリキへの依存。デュークの高さ、エリキのクオリティはJ1でも優位を取れるレベルであることは間違いない。J2では突出した2人のタレントを生かして相手を圧倒してきた。

 ただ、先述したように8月にエリキが負傷離脱して以降は、攻撃に迫力を欠いた。藤尾の台頭やチーム全体でその穴を埋めるよう努めたが、完全に埋められたのかといったら疑問が残る。

 しかし、この点に関しては横浜F・マリノスやガンバ大阪で実力を証明済みのアデミウソンを獲得している。エリキの負担軽減やチームのクオリティアップに繋がることは間違いなく、今のチームにどう組み込むかは楽しみだ。

 熊本戦後の会見で、黒田監督は今季のチームをベースにしつつ、J1仕様にクオリティを上げる必要性を語っている。藤田社長も試合後に、来季も目標に応じたバックアップを示唆した。このフロントと現場の一体感も、今の町田の強さを象徴しているものの一つだ。

 また、黒田監督はJ1での戦い方のアイディアもあることを示唆している。今季開幕前の懐疑的な声に対して、1年でJ1昇格という結果で応えてみせた。舞台をJ1に移しても黒田監督ならば、良い戦いができるのではないか。そんな期待を抱かせる今季の戦いだった。

 黒田監督は試合後の胴上げを拒んだという。それは次節、ホーム最終戦で"J2優勝"というタイトルを獲得するためだ。このクラブ史上最高のシーズンを最高の形で締めくくるために、町田は最後まで勝利にこだわり続ける。

著者プロフィール

  • 篠 幸彦

    篠 幸彦 (しの・ゆきひこ)

    1984年、東京都生まれ。編集プロダクションを経て、実用系出版社に勤務。技術論や対談集、サッカービジネスといった多彩なスポーツ系の書籍編集を担当。2011年よりフリーランスとなり、サッカー専門誌、WEB媒体への寄稿や多数の単行本の構成を担当。著書には『長友佑都の折れないこころ』(ぱる出版)、『100問の"実戦ドリル"でサッカーiQが高まる』『高校サッカーは頭脳が9割』『弱小校のチカラを引き出す』(東邦出版)がある。

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