FC町田ゼルビアのサッカーはJ1でも通用するか シンプルな戦い方を高い強度で徹底した黒田剛監督の手腕 (2ページ目)

  • 篠 幸彦●文 text by Shino Yukihiko

【守備の立て直しと基本の徹底】

 青森山田を高校サッカー界屈指の名門へと育て上げた黒田監督の手腕が、J2というプロの舞台で通用するのか。そんな懐疑的な目が少なからずあったなかで、町田は開幕戦で引き分けたあとに6連勝と快進撃を見せた。

 チーム体制が変わり、戦力も大幅に入れ替わりがありながら短期間でチームをまとめあげた黒田監督のマネージメントは見事だった。昨季の町田は42試合で50失点。その失点の多さから、黒田監督はすべての失点シーンの映像を徹底的に分析し、守備から立て直しを図ったという。

 選手たちは「基本を徹底する人」と黒田監督の指導を口々に語った。プロであっても基礎ができていない選手や基本を怠る選手がいた。黒田監督はそんな選手たちに対して、長い教員生活で培ったわかりやすく伝わる言葉で、徹底的に原理原則をチーム全体に叩き込んだ。

 その効果はすぐに表れ、開幕から7試合で失点はわずか1。相手の狙いをタイトな守備で潰しつつ、前線のデューク、エリキというタレントを生かしたシンプルなカウンターで押し込む迫力ある攻撃で圧倒した。

 黒田監督はシーズンの全42試合を6タームに区切り、1タームで勝ち点15ポイントを目標に掲げていた。その最初のタームで19ポイント。文句のつけようのないスタートダッシュとなった。

 第2タームでは秋田、甲府に敗れながらも勝ち点30まで伸ばし、目標通りの勝ち点を積み重ねた。2敗はしたものの町田は決して連敗をしなかった。第3タームで16ポイント、第4タームで14ポイントと、ライバルたちが躓くなかで町田は安定して調子を維持し、第10節の大分トリニータとの天王山を制して以降、一度も首位を明け渡さなかった。

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