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FC町田ゼルビアのサッカーはJ1でも通用するか シンプルな戦い方を高い強度で徹底した黒田剛監督の手腕 (4ページ目)

  • 篠 幸彦●文 text by Shino Yukihiko

【シンプルなサッカーを高い強度で続けた】

 繰り返すように、今季の町田の強さは強固な守備がベースである。4-4-2のシステムを基本としながら相手によって3-4-2-1を併用し、高い強度と柔軟な対応力で相手の強みを消して、攻撃を跳ね返し、ボールを奪った。

 そして奪ったボールはターゲットのデュークにロングボールを送るか、あるいはペナルティーエリア横のスペースにエリキをはじめ、スピードのある選手を走らせて相手を敵陣深くに押し込み、徹底してクロスを入れた。そこで点が入らなくともその流れで得たCKやスローインといったセットプレーも町田の強みだった。

 戦い方はシンプルでありながら高い強度と徹底ぶり、それをシーズン通して保ったマネージメント力。それは相手にとって圧力となり、多くのチームが屈していった。早い時間帯に町田に先制を許して主導権を握られるか、あるいは終了間際に町田の攻撃に耐えきれず、決勝点を許してしまうというのが多くのパターン。

 高い守備力がベースではあるが、その攻撃力も圧巻だった。39節を終えて73得点は、昨季圧倒的な攻撃力でJ2を優勝したアルビレックス新潟の最終的な得点数に並ぶ数字である。

 堅守速攻で堅実なクオリティを示した町田だが、来季に向けて懸念点も当然ある。一つは生命線でもあった前線からのハイプレスがはまらないと、チームのリズムが掴めなかった点だ。

 相手にビルドアップでうまく数的優位を作られ、2トップで攻撃を制限できないと中盤のライン間やサイドのスペースに侵入を許し、決定機を作られることは少なくなかった。そうした時でも黒田監督のハーフタイムの修正で立て直してきたが、相手のフィニッシュのクオリティ不足によって助けられることも多かった。

 例えば第7節の藤枝MYFC戦は逆転を許してもおかしくなかったし、第37節のいわき戦では修正する前に前半で2失点し、2-3と敗れている。当然ながらJ1となればフィニッシュのクオリティは上がり、そうした隙を逃してくれないだろう。

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