森保ジャパンのリストに載らない代表経験者の意地を見た 横浜F・マリノスSB松原健のビューティフルゴール (3ページ目)
それは右足のややアウトにかかったインステップだった。降りしきる雨がボールに重さを加えていた。ジャストミートしたその弾道は水切りショットのような鋭さをともないながら、電光石火のごとく鹿島ゴール右のサイドネットに吸い込まれていった。滅多に見られないビューティフルゴールが炸裂した瞬間である。兼MF的な独特のポジションをとる松原らしいゴールだった。
従来型のサイドバック、鹿島で言うなら常本には生まれにくいゴールでもあった。その様子をはるか後方から呆然と見送った知念はその時、何を思っただろうか。
SBの概念が旧態依然としている森保ジャパンにない魅力であることも確かな事実で、代表リストに名前がなかった代表経験者の意地を見た瞬間でもあった。松原のまさに胸をすくような痛快さをともなう一撃に、観戦者のひとりとして酔いしれずにはいられなかった。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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