森保ジャパンのリストに載らない代表経験者の意地を見た 横浜F・マリノスSB松原健のビューティフルゴール (2ページ目)
【MF的な役割もこなすSB】
横浜FMの両SB(松原健・右、永戸勝也・左)のうち、松原はマイボールに転じると守備的MFに近い真ん中のエリアに進出し、中盤選手然とパスワークに絡む。マイボール時には3バックに見えるほどだ。右SBの位置取りで、4バック、3バックを調整していると言ってもいい。アンジェ・ポステコグルー時代から右SBを張る松原にとっては、もはや慣れた動きであるはずだ。川崎の右SB山根視来も同類と言える。だが、鹿島の両SBはいずれも外オンリーの従来型だ。松原と鹿島の常本佳吾は同じ役割を持つ右SBには見えなかった。
松原と常本に対峙した相手の左サイドの選手は、それぞれ知念慶(対松原)とエウベル(対常本)になる。松原のポジションがマイボールに転じた時、若干でも内寄りになれば、そこは対峙する知念にとって狙い目になる。だがこの試合で、知念が縦突破を決めたシーンはなかった。クロスボールさえ上がってこなかった。右の藤井智也が横浜FMの永戸勝也と競り合いながら、幾度か突破を図る姿とは対照的だった。藤井が典型的なサイドアタッカーであるのに対し、知念はその手のスペシャリストでないこともあったのかもしれない。だがその結果、攻撃面で左右のバランスが乱れたことは確かだった。
松原は中盤的な役もこなしながら、結果的に知念のサイド攻撃を阻止することに成功した。知念は後半19分、アルトゥール・カイキと交代でベンチに下がったが、攻撃に有効に絡めなかっただけではなかった。その8分前、相手ボール時において対面の横浜FMの選手に、この試合を決定づける致命的な一撃を許していた。
左サイドで攻守が切り替わり、横浜FMはスローインからパス交換を経て、左ウイングのエウベルにボールをつないだ。その時、松原は逆サイドで知念と近距離で動きを牽制し合うように構えていたが、真ん中でプレーするMF的な動きが染みついていたのだろう。チャンスと判断すると、知念を置き去りにして走った。ペナルティーアークまで10メートル。ゴールほぼ正面の位置にエウベルからタイミングよくボールが流れてきた。
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