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FC町田ゼルビアの「勝負強さ」はどこへ? 戦術から黒田監督のコメントまで異変あり

  • 栗原正夫●文 text by Kurihara Masao

 J1初昇格ながら、昨季は終盤まで優勝争いを繰り広げたFC町田ゼルビア。その町田に今季、やや異変が見られる。

 第9節を終えた時点で首位に立ったものの、第17節を終えて7勝3分け7敗の8位と中位で足踏み。特に第9節川崎フロンターレ戦から第16節清水エスパルス戦までの8試合は、1勝2分け5敗と急失速した。

「許していい失点なんてひとつもないし、負けていい試合もない」

 黒田剛監督は就任以来、徹底した守備意識をチームに浸透させ、何より「敗戦」を嫌う姿勢を貫いてきた。J2時代の2023年も含め、黒田体制下の町田が連敗を喫したのは2シーズンで1度のみだった。しかし、今季はすでに、3連敗を含む2度の連敗を経験。さらに、昨季は一度もなかったアディショナルタイムの失点による敗戦も、第12節の湘南ベルマーレ戦(0-1)、第15節の京都サンガ戦(1-2)と、すでに2試合ある。

厳しい表情で試合を見つめるFC町田ゼルビアの黒田剛監督(写真は清水エルパルス戦) photo by Fujita Masato厳しい表情で試合を見つめるFC町田ゼルビアの黒田剛監督(写真は清水エルパルス戦) photo by Fujita Masato とりわけホームでの京都戦は、得意のロングスローから先制点を挙げながら、試合終盤に逆転を許すという痛恨の結果となった。昨季、町田が先制しながら逆転負けを喫したのはわずか1試合。先制すればその1点を守りきるのが、町田の"勝ちパターン"だったはずだ。だが今季は、開幕のサンフレッチェ広島戦に続いて早くも2度の逆転負けを喫するなど、勝負強さに陰りが見えている。

 京都戦で左ウイングバックとしてフル出場した林幸多郎は、試合後にこう語った。

「(73分に同点に追いつかれて)アディショナルタイムに勝ち越されたときは、正直、『またか......』と思いました。去年はシーズン後半に(攻撃時にロングボールを多用する戦い方が)対策され、今季はそれに対して、もう少しボールを持てるようなトライをしてきたのですが、やることが増えたぶん、対応しきれない部分も出てきている。

 昨季は守備をベースに、多少攻撃がうまくいっていなくても失点ゼロであれば問題ないみたいな部分もありました。今季は攻撃に舵を切っているわけではないですが、攻撃面で考えることが増えて、(守備面で)徹底すべきところでできていない場面が増えてしまっているというか......。攻撃と守備、どちらかを選ぶという話ではないけれど、そこは少し考える必要があるかもしれません」

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著者プロフィール

  • 栗原正夫

    栗原正夫 (くりはら・まさお)

    1974年6月11日生まれ、埼玉県出身。大学卒業後、放送、ITメディアでスポーツにかかわり、2006年からフリーランスに。サッカーを中心に国内外のスポーツを取材し、週刊誌やスポーツ誌に寄稿。ワールドカップは1998年、夏季五輪は2004年からすべて現地観戦、取材。メジャーよりマイノリティ、メインストリームよりアンダーグラウンド、表より裏が好み。サッカー・ユーロ、ラグビーワールドカップ、テニス4大大会、NBAファイナル、世界陸上などの取材も多数。

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