FC町田ゼルビアの「勝負強さ」はどこへ? 戦術から黒田監督のコメントまで異変あり (3ページ目)
【「一喜一憂しすぎてもよくない」】
また、戦い方以上に気になるのは、黒田監督の姿勢の変化だ。
過去2年、町田の躍進を支えていた要因のひとつに、勝負に強くこだわる黒田監督の強気なリーダーシップがあったのは間違いない。だが、昨季途中にはロングスローやロングボール主体の戦術、ロングスロー時にタオルを使用するといった行為が想像以上にネットで批判されるなどして、クラブが誹謗中傷者に対して訴訟を起こす事態にまで発展した。また、今年4月には監督のチーム内でのパワハラ疑惑が週刊誌で報じられた(クラブはこれを事実無根と否定)。そうした周囲の圧力が影響してか、黒田監督の言動や采配が軟化しているように感じるのは気にせいだろうか。
偶然かもしれないが、週刊誌の報道が出始めた時期と、町田の成績が失速し始めた時期は重なっている。
黒田監督は柏戦を前に、下記のような言葉を口にしていた。
「いま町田は新しいフェーズに入っている。結果が伴うに越したことはないが、勝負事なので、まずはやれることをやるだけ。勝敗に一喜一憂しすぎてもよくない」
「目標は5位以上と言ったが、J1はどのチームも強いし、ギリギリの勝負をやっている。あまり勝ち負けに捉われすぎると、かえってバランスを崩す」
「高校サッカーではないし、相手もプロで、研究もされる。そんな世界で毎年上位にい続けるのは簡単じゃない。チャレンジするなか、失敗を受け入れることも必要」
そして、こんな言葉も漏らしている。
「高校サッカーからプロの世界に来て、毎年首位争いばかりして、簡単に勝ててしまうと『なんだ』ってなるでしょう。そういう意味では『そんなに甘くないぞ』と新しい試練を与えられているのかもしれない」
内容自体は冷静な分析とも受け取れる。ただ、黒田監督のかつての強気な姿勢に比べると、どこか慎重で弱音を含んでいるようにも聞こえる。
湘南戦で就任後初の3連敗を喫した際には、定例となっていた試合2日前の取材対応を拒否するといったこともあった。かつては歯に衣着せぬ物言いで注目を集めた黒田監督だが、昨季終盤以降はメディア対応の機会は減り、その発言も控えめになっている印象は否めない。言われのない批判など外部の声に過剰に反応し、これまで貫いてきた哲学やポリシーを見失ってしまえば、本末転倒だろう。
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