広島の3バックは「リーグ最高レベル」なのに今季未勝利...起爆剤は佐藤寿人の「背番号11」を受け継いだ若きエース (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

【昨季9ゴールを記録した23歳】

 本来、点を取るのはFWの役割だ。1トップ2シャドーを基本とする広島だが、この日はナッシム・ベン・カリファとピエロス・ソティリウが2トップのような形を形成。しかし、ともに献身的なプレスと身体を張ったポストワークで奮闘したものの、フィニッシュワークに関しては質が伴わなかった。

 起爆剤となれるのは、満田誠だろう。昨シーズン、大卒ルーキーながらチームトップの9得点と2位の8アシストを記録したアカデミー出身のアタッカーは、今シーズンより佐藤寿人がつけていたエースナンバー11を託されている。

 しかし、この日は右ウイングバックとしてピッチに立ち、攻撃だけではなく守備のタスクにも奔走。それでも満田は東のゴールをアシストし、意表を突くFKであわやというシーンも生んでいる。一方で失点シーンにも絡んだことで、評価が分かれるパフォーマンスとなった。

 右サイドの人材が不足しているなかで「フレキシブルに多くのポジションに対応できる」(ミヒャエル・スキッベ監督)満田をウイングバックで起用するのは、選択肢のひとつではある。

 しかし、バイタルエリアで違いを生み出し、正確かつ強烈なシュートを備え、ハイプレスの担い手でもある満田は、やはり前線でこそ輝きを放つ。広島のシステムであれば、2シャドーの一角が適正となるだろう。

「相手からの警戒や注目は、去年よりもあると思います。そういうなかで今日、アシストという結果を残せたのは自分にとって一歩、踏み出せたかなと思います。ただ、失点に絡んだことはマイナスだったので、マイナスを減らして、プラスを積み重ねていけるようにしたい」

 エースとしての自覚が芽生え始める2年目のアタッカーが、課題解消のキーマンとなることは間違いない。

 そういえば昨季の広島も、スキッベ監督がコロナの規制のため入国が遅れた影響もあり、開幕から5試合勝ちがなかった。今季もスロースターターぶりを露呈してしまったが、攻守両面で質の高いタレントは揃い、スキッベ監督の修正力の高さはすでに昨季の戦いで証明済みでもある。

 たしかに結果は出ていない。それでもまだ、期待感は薄らいでいない。

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【profile】
中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに加入。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグMVPを受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重65kg。

佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。

プロフィール

  • 原山裕平

    原山裕平 (はらやま・ゆうへい)

    スポーツライター。1976年生まれ、静岡県出身。2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。

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