検索

川崎フロンターレが8位ともたついているのはなぜか ふたつのポジションの「揺れ」に現状は集約されている

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 J1リーグは第3節に入ったが、実力伯仲の試合が多い。それぞれのクラブが持ち味を出して戦い勢力は拮抗。激しいつばぜり合いが続いている。

 3月4日、等々力陸上競技場。川崎フロンターレは湘南ベルマーレをホームに迎えて、1-1と引き分けている。

 覇権奪回を目指す川崎だが、まだチームとしてノッキングする箇所があり、本来の力は出せていない。3試合終わって勝ち点4。現時点での順位にさほど大きな意味はないが、8位は出遅れだろう。

 プレーの仕組みは見えるし、選手の質も高い。しかし、ひとつひとつのプレーに確信が薄いのか、時間帯によって波がある。蹴るのか、つなぐのか、その迷いがチームに伝播し、判断を鈍らせる。

 その揺れを一身に背負っているのが、GKチョン・ソンリョンだろう。

 開幕戦の横浜F・マリノス戦ではキックミスを奪われ、早々と失点を許した。それはチームに重くのしかかった。湘南戦も、開始4分でキックが短くなって、相手に奪われ、あわや失点というピンチに。他にも覚束ないフィードが散見した。川崎のプレー構造はGKも含めたビルドアップで成立しているだけに、ここにミスが出ているのは由々しき事態だ。

 一方でチョン・ソンリョンは相手の決定機を確実に防いでいる。前半終了間際、クロスからのヘディングシュートを片手一本で止めたシーンは、ひとつのハイライトだった。セーブ率は高く、チームに欠かせない存在でもある。

 チームのプレーモデルにGKをどう落とし込むのか――。そこの采配が、今後を左右するかもしれにない。

湘南ベルマーレ戦に先発したものの不発に終わった宮代大聖(川崎フロンターレ)湘南ベルマーレ戦に先発したものの不発に終わった宮代大聖(川崎フロンターレ)この記事に関連する写真を見る もうひとつ、川崎はゴールに向かう小気味よさはあるのだが、"荒々しさ"が足りない。きれいすぎる、と言えばいいだろうか。

「交代で(山田)新が入って、フィフティフィフティで前を向ける、というのは相手にとっても嫌だったはずで、(同点ゴールのシーンも)新の周りを走ると、ボールが転がってくるかも、というのはありました。"意図的じゃないプレー"も狙っていかないと」(川崎/山根視来)

1 / 3

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

フォトギャラリーを見る

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る