川崎フロンターレが8位ともたついているのはなぜか ふたつのポジションの「揺れ」に現状は集約されている (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

【湘南が序盤、好調な理由】

 後半36分、川崎は大島僚太が縦パスを入れ、瀬川祐輔が山田新にフリックすると、これは相手にカットされる。しかし、果敢に前へ進もうとしたプレーが吉と出る。ボールがこぼれ、それを拾った瀬川がゴールに流し込んでいる。読みや準備を上回るには、執着や野放図さも欠かせない。実際、後半のスクランブル態勢になった展開のほうが、怖いプレーが多く出ているのだ。

 そして、現チームのキーマンがトップを託されている宮代大聖だろう。

 宮代は、Jリーグでも屈指のセンスの持ち主である。この日も、敵陣でのカットから背負ってボールを受け、反転から左足で放ったシュートには、技量の高さが横溢していた。プレスのかけ方も、ポストプレーも、中盤に落ちての技術も、どれも水準は高い。

 しかし、宮代は悪辣さに欠けるのだ。ふてぶてしさ、執着心、と言い換えてもいい。たとえば前半38分、マルシーニョに展開し、ゴール前に入るところで、わずかだがスピードを落とし、クロスに間に合わなかった。大久保嘉人や小林悠だったら、猛然とポジションに入っていただろう。もし味方がそこにボールを入れなかったら、怒りを露にし、ゴールへの執念を漲らせたはずだ。

 宮代はそれを出すことができたら、日本を背負うストライカーになるだろう。彼は今の川崎を映す鏡だろう。どちらに転ぶか。現時点では、山田新のほうにストライカーの匂いはするが......。

 GKとCF。ふたつのポジションに、川崎の現状が集約されている。

 一方、湘南はこれ以上ない序盤を過ごしている。1勝2分け。下馬評は下位予想だっただけに、負けなしで6位は上出来だ。

 彼らの戦いの要諦は、「機先を制する」ところにある。たとえ足を使って消耗しても、最初の15分は強度の高いプレスをかけ、切り替えでは一斉にスペースへ走る。出鼻を挫くことで、相手に悪いイメージを植えつけ、ミスを誘発。開幕戦でサガン鳥栖を1-5と叩きのめした試合は、その戦法が功を奏した。

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