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川崎フロンターレ、開幕戦ホーム敗北も悲観する必要なし。王者に「サッカー」で勝っていた (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 局面で、王者は抜け目がなかった。

 一方で、川崎は"青さ"が出た。横浜FMが出し抜いた要所に、それは現れていたと言える。また、15分は続かない横浜FMの猛然としたプレスに対し、真っ向から対峙する必要はなかった。事実、10分すぎたころから横浜FMは足が止まってきて、後半は消耗の代償を払っていたのだ。

 それでも、ゲーム全体では川崎は戦力的厚みを増した印象である。

 家長昭博がケガ明けのぶっつけ本番で本調子に程遠く、前半は右サイドで起点を作れなかったのは事実だろう。しかし後半は、交代出場の瀬川祐輔が幅を取って、インサイドで山根が生き生きとプレーするなど、むしろ収穫と言える。家長も確実にコンディションを上げてくる。

 交代で入った大島僚太、ジョアン・シミッチも、中盤を強固にした印象だった。シミッチの左足は他にはないリズムで、佐々木のクロスから橘田が合わせた得点の起点にもなっている。これだけ相手のバックラインを押し下げられるサイドアタックが可能なだけに、バックラインの前にクロスを入れる工夫ができると、得点は増えるはずだ。

 その点で、マルシーニョは三苫薫のような独立した「戦術」にもなり得る。

 敗れた川崎だが、悪くない船出と言える。2月25日は、敵地で鹿島アントラーズ戦。相手を圧倒するだけの材料は揃っている。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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