川崎フロンターレ、開幕戦ホーム敗北も悲観する必要なし。王者に「サッカー」で勝っていた

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 2月17日、川崎。Jリーグ開幕戦、川崎フロンターレは昨年王者である横浜F・マリノスと対戦し、本拠地で1-2と敗北している。プロの世界で、それは朗報ではない。結果を正解とし、「4-3-3は無理だ」「日本代表の谷口彰悟移籍の穴は大きい」「サイドバックがボランチに入るのは効果的か」「FWのパワーが足りず、ポストも潰れていた」「ひとつの時代の終わり」......と敗因探しになるだろう。

 しかし、悲観するようなサッカーだったのか?

「とにかく相手を上回るため、いろいろなことをチャレンジしています。その点、選手の取り組む姿勢だとか、怖がらずにゲームで出そうとする点は非常によかったかな、と。ただ、やっぱり勝負の世界なので、結果にこだわってやらなければいけない。そこは自分が責任を取るところで、これからもよりチャレンジさせていきたいと思っています」

 試合後の記者会見で、川崎の鬼木達監督はそう語っている。その言葉に、横浜FM戦は凝縮されていただろう。

開幕戦で横浜F・マリノスに挑んだ川崎フロンターレのイレブン開幕戦で横浜F・マリノスに挑んだ川崎フロンターレのイレブンこの記事に関連する写真を見る 開幕戦で川崎は、進むべき道を示していた。

 たとえば18分のプレーは象徴的だった。右サイドバックの山根視来がボランチの位置に入り、GKチョン・ソンリョンからのボールを受け、アンカーの橘田健人へ。トップから降りてきた宮代大聖に差し込み、これを左サイドバックの佐々木旭に落とすと、宮代と入れ替わるようにトップに入った遠野大弥がバックラインの裏にスルーパスを呼び込み、GKと1対1になっている。シュートはGKに止められたが、中盤からボールをつなぎ、人が動き、ラインを突破する様子は鮮やかだった。

 橘田、遠野、脇坂泰斗の3人で構成した中盤は、Jリーグではどのチームをも凌駕する技量を感じさせた。そこに周囲の選手が連係すると、手がつけられなかった。中盤での勝負に勝利し、ボールを握って、能動的サッカーで相手を引き回す――。

 その内容に、悲観する点などひとつもなかった。

 自分たちが動くことで相手を動かし、自在に守備網を突き破るには、相当な技術の修練が欠かせない。裏返せば、それは再現性のあるプレーで、これからも必ず武器になる。後半にはギアがさらに上がって、鳥肌が立つようなパスを長短で入れ、「サッカー」で横浜FMに勝っていた。

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