横浜F・マリノスによぎる「2013年の悪夢」。風雲急を告げるJ1優勝争いの行方はどうなる? (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 優勝目前から一転、尻に火がつく事態に陥ったとあって、横浜FMを率いるケヴィン・マスカット監督も顔色を失っていた。

「ゲームは支配していた」

 磐田戦後の記者会見で何度もそう繰り返し、「負ける理由はなかった」とまで言って強がる様子が、逆に現実から目を背けているかのようでショックの大きさをうかがわせた。

 横浜FMを襲うよもやの緊急事態に思い出されるのは、2013年の"悪夢"だ。

 この年、シーズンを通して優勝争いを繰り広げてきた横浜FMは、第33節アルビレックス新潟戦を前に、勝てば優勝という状況を迎えていた。

 しかも舞台は、歓喜の瞬間をこの目で見ようと6万人を超える観衆が詰めかけた、ホーム・日産スタジアム。優勝へのカウントダウンは確実に進んでいるはずだった。

 だがしかし、横浜FMは新潟の果敢なプレスの前にリズムがつかめず、0-2と完敗。続く最終節の川崎戦でも0-1と敗れ、結局、サンフレッチェ広島に逆転優勝を許す結果となった。

 致命傷となったラスト2試合での連敗が、そのシーズン初の連敗だったことも、まさかの印象を強調すると同時に、今季に通じる"嫌な予感"を増幅させる。

 また、横浜FMが当事者ではなかったものの、いくつかの共通点で今季と結ばれるのは、2007年のJ1である。

 このシーズン、第21節で首位に立った浦和レッズが、以降その座を一度も他に譲ることなく最終節を迎えていた。

 2位の鹿島アントラーズとは勝ち点1差ながら、浦和の最終節の相手は、すでに最下位でのJ2降格が決まっていた横浜FC。浦和の優勝は動かし難いものかに思われた。

 しかし、浦和は最下位相手に0-1とまさかの敗戦。第29節終了時点で浦和と鹿島との勝ち点差は10もあり、戴冠は時間の問題だったはずが、浦和はその後の5試合で2敗3分けに終わり、ほとんど手中にしていた優勝を逃してしまう。

 一方、奇跡の逆転優勝を成し遂げた鹿島は、この優勝を端緒に史上初の3連覇を成し遂げることになる。

 過去にJ1で2連覇の例は複数あるが、3連覇はこの一度だけ。3連覇を成し遂げるためには、実力だけでなく、奇跡と称されるような展開の後押しが必要なのだとすれば、今季は川崎の逆転優勝による史上2度目の快挙達成に向かって進んでいるようにも見える。

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