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横浜F・マリノスを救った元欧州組。そのドリブルはサポーターを勇気づける (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishuku Torao

チャンピオンズリーグ出場経験も

 この時点で一番の爪痕を残していた選手は宮市だった。もし横浜FMが勝利すれば、最優秀選手は宮市と言いたくなっていた。しかし、宮市のプレーが、時間の経過とともに若干、淡泊になっていったのに対し、1トップ下で起用された西村拓真はその反対に、時間の経過とともに存在感を高めていった。

 前半38分。西村は、小池裕太が蹴った左CKがゴール前に上がった時、フリーだったとはいえ、圧倒的に高いジャンプを披露した。高い打点から右ゴールライン上に鋭く落下する鮮やかな先制点をマークした。

 今季、ベガルタ仙台から移籍してきたアタッカー。2018-19シーズンにはCSKAモスクワの一員としてチャンピオンズリーグ(CL)に出場した経験もある元欧州組だ。ポジションはFW。センターフォワードに加え左右のウイングもこなすが、1トップ下としての出場はこの日が初めてだった。

 横浜FMの1トップ下と言えばマルコス・ジュニオールになるが、先述のとおり、3日前に行なわれた柏戦で負傷退場。その試合で後釜としてプレーしたのは、昨季まで2シーズン、町田ゼルビアに在籍していた吉尾海夏だった。この日も1トップ下に座るのはその吉尾かと思われた。

 西村の1トップ下起用は、こちらの予想を少しばかり越えていた。1トップ、アンデルソン・ロペスの下には左から仲川、西村、宮市が並んだ。

 仲川、宮市という100メートルを10秒台で走りそうな高速系には劣るかもしれないが、西村もスピードを備えている。ボールを前方に速い速度で運ぶ力がある。何といっても足の回転が速い。視覚的に伝わりやすいアクションだ。すなわち、サポーターを勇気づける訴求力の高いドリブルをする。

 さらに言うならば、初先発に燃えたのか、この日はやる気も漲(みなぎ)っていた。後半27分、アンデルソン・ロペスが下がり、吉尾が投入される戦術的交代が行なわれると、西村は1トップに回ったのだが、前線からボールと相手をよく追いかけた。後半25分には、相手GK前川黛也に渡るボールを最後まで全力で追いかけ、ミスフィードを誘っている。

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