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フロンターレの背番号14を背負う覚悟。脇坂泰斗は中村憲剛からの言葉に心を熱くした (4ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

【自分なりの背番号14像】

「一番はやっぱり立ち位置ですよね。紅白戦で対戦した時には、本当にいつも嫌なところに立っているなと思いました。ボールを取りに行けば簡単にはたかれてしまうし、取りに行かなければ行かなかったで、前を向いてスルーパスを出されてしまう。常に相手が怖がる位置に入っていく。自分はまだまだですけど、そういったことを学べたという自負はあります」

 追いつきたい、越えたいという思いが自分を高みへといざなってくれた。

「近づくことすらできないまま引退されてしまったというか。僕は憲剛さんが引退発表会見をした朝に、その事実を知ったのですが、前日に憲剛さんがバースデーゴールを決めた試合で、まだまだ自分とは差があるなと感じていました。ベンチからあのゴールを見て、明日からまた追いつくために頑張ろうと思った矢先の引退発表だったんですよね」

 結果的に追いつくことも、越えることもできなかったのかもしれない。だが、背番号を受け継いだように、その意志をピッチで体現していくことはできる。

 背番号14をつけることを報告した日、電話があることを予想していた中村は、こう脇坂にメッセージを送った。

「泰斗なりの背番号14を作っていってくれればいいから」

 胸が軽くなると同時に、心が熱くなった。

「こうあってほしいというメッセージもたくさんもらったのですが、その言葉は自分でも強く持たなければいけないことでもあったので、気持ちが楽になりました。そこに目を向けすぎずに、自分なりの背番号14像を築いていければと思っています」

 周囲からの厳しい目も重圧も、覚悟のうえだ。

「憲剛さんの次の14番が一番、プレッシャーになることもわかっています。でも、決して長くはないサッカー人生で、誰もが経験できることじゃない。自分が成長するためにも、うまくなるためにも、誰もができるわけではないその経験をすることで、選手としての価値も高まっていくのではないかと思っています」

 その背中を追うのではなく、自分自身が築いていく。そうすることで、川崎フロンターレの背番号14は、さらに意味のある番号になっていく。

【profile】
脇坂泰斗(わきざか・やすと)
1995年6月11日生まれ、神奈川県横浜市出身。川崎フロンターレの下部組織出身で、阪南大学を経て2018年に川崎に入団。2年目からポジションを確立し、2021年には日本代表デビューも果たす。2022年から中村憲剛の背番号14を引き継いだ。ポジション=MF。身長172cm、体重68kg。

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