J1リーグ3連覇のキーマン、脇坂泰斗26歳。「ミスターフロンターレ」中村憲剛の魂を受け継ぐ男

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

Jリーグ2022開幕特集
脇坂泰斗(川崎フロンターレ)インタビュー@前編

 川崎フロンターレで5年目を迎える脇坂泰斗には、はっきりと思い描く選手像がある。

「チームが苦しい時に何ができるか。チームが苦しい時に助けられる選手になりたい」

 一歩、また一歩。目指す未来に近づいている自信と成長が、今季から背負うことを許された番号にも表れているのだろう。

「試合の雰囲気を変える。または試合の流れを落ち着かせる。そういったことができる選手になりたい」

昨季は日本代表にも選ばれたMF脇坂泰斗昨季は日本代表にも選ばれたMF脇坂泰斗この記事に関連する写真を見る たとえば昨季のJ1第29節、徳島ヴォルティス戦である。1−1に追いつかれていた42分だった。脇坂はペナルティーエリア中央で旗手怜央、マルシーニョとつながれたボールを受けると、DFの間を縫うようなミドルシュートを決めた。

 チームは直前にAFCチャンピオンズリーグのラウンド16で敗れ、失意に包まれていた。韓国からの移動に加えて中3日での連戦。コロナ禍とあってバブル方式(隔離)の真っ直中。そんなチームの重苦しい雰囲気を一変させる一撃だった。

 たとえば昨季のJ1第32節、鹿島アントラーズ戦である。0−1で追いかけていた83分だった。左サイドでFKを得ると、脇坂は右足で鋭く正確なクロスをゴール前に入れた。これを途中出場したばかりの山村和也が頭で決めて同点に追いつく。試合終了間際の逆転勝利につながる、渾身のキックだった。

 リーグ連覇に王手をかけたJ1第33節、清水エスパルス戦もそうだった。得点にこそならなかったが、脇坂は40分にコースを狙った惜しいシュートでチームに追い風を吹かせた。これもゴールやアシストといった記録には残っていないが、47分にレアンドロ・ダミアンが決めた決勝弾は、脇坂の流れを読んだサイドチェンジから生まれた。

「昨季、特にシーズン終盤に感じた手応えというのは自分のなかにあります。自信のあるプレーもできましたし、そういったなかでJリーグアウォーズではベストイレブンにも選んでいただき、1月には国内組の合宿でしたが代表合宿にも呼んでもらえました。年々、自信は持てるようになっています」

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