フロンターレの背番号14を背負う覚悟。脇坂泰斗は中村憲剛からの言葉に心を熱くした

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

Jリーグ2022開幕特集
脇坂泰斗(川崎フロンターレ)インタビュー@後編

 あれはまだ、脇坂泰斗が川崎フロンターレで出場機会を掴み始めた2019年のシーズン序盤だったと記憶している。

 ある選手について話を聞くと、こう答えてくれた。

「壁はまだまだ高いなって思いますけど、高くなければ挑む意味がないというか。自分はこんなにすごい人とポジション争いができているんだなって。それに、この高い壁に挑めるのはチームメイトである自分だけだと思っています」

 川崎が4−2−3−1システムを採用していた当時、トップ下を争っていた。試合に出始めていたとはいえ、その壁を越えなければ、選手として確かな自信を掴むことも、確固たる地位を築くこともできない。怯むことなく挑もうとする姿勢に、強く感動したことを覚えている。

◆脇坂泰斗@前編はこちら>>「ミスターフロンターレ・中村憲剛の魂を受け継ぐ男」

フロンターレの背番号14を今季から引き継いだフロンターレの背番号14を今季から引き継いだこの記事に関連する写真を見る 子どものときから憧れ、ユース時代を川崎のアカデミーで過ごした。トップチーム昇格は叶わず、悔しさを胸に阪南大学に進み、成長したことで再び水色のユニフォームを着ることができた。その壁が高く、大きいことは誰よりもわかっていた。それでもなお、彼は追いつきたいと思っていた。

 言わずもがな、その壁とは中村憲剛のことである。

 あれから3年----。脇坂は中村憲剛がつけていた背番号14を背負うことになった。

 あまりに偉大すぎる番号を受け継ぐ覚悟は、1年前からできていた。

「憲剛さんが現役を引退した2020年が終わり、クラブには自分がその番号を背負いたいと、意志は伝えていました。ただ、最終的な決定権は僕にはないので、昨シーズンは8番のままになりました。簡単につけることのできない番号だということは、誰しもがわかっていることなので、そこに対する思いは持ちつつ、1年間、また頑張ろうという思いで昨シーズンはスタートしました」

 その結果、チームはJ1連覇を達成した。4−3−3システムのインサイドハーフとして、脇坂はリーグ戦35試合に出場して3得点。その数字以上にピッチでは存在感を発揮した。コースを突くミドルシュートや密集でも恐れることなくボールを受けるキープ力、DFとDFの間を縫うような精度の高いパスで、文字どおり攻撃を彩った。

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