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青森山田が備えていた「大成する選手」に必要な要素。100回目にふさわしい最強王者の誕生 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

【大津のシュートはわずか1本】

「押し込まれる展開になることはわかっていましたが、思っていたより相手の圧力とパワーがすごくて後手に回ってしまいました」

 大津のキャプテン森田大智が振り返ったように、その質の差が次第に実力差として浮かび上がっていった。

 青森山田には、セットプレーという強力な武器も備わっていた。シンプルな攻撃から次々にその機会を掴んだ青森山田は、37分に得たCKを丸山大和が頭で合わせて先制に成功。その3分後にも隙を逃さず左サイドに侵入し、グラウンダーのクロスを名須川真光が足先で合わせ2点目を奪取した。

 さらに後半早々の55分には、"伝家の宝刀"ロングスローから、最後はエースの松木玖生が頭で合わせて3点目を奪うと、78分には渡邊星来が豪快なヘッドでダメを押した。

 4点リードで迎えた終盤に、コーナー付近で時間を稼ぐプレーがあったことに賛否両論あるかもしれない。それでも2年前は2−0からの逆転負け、そして去年はリードを守り切れずにPK戦に持ち込まれての敗戦と、2年連続で目前で優勝を逃したバックボーンを考えれば、わずかな隙も与えたくないという想いは理解できる。

 終わってみれば、相手に1本のシュートも打たせない完全勝利での戴冠だった。

 今年の青森山田において、松木の存在が大きかったのは間違いない。FC東京への加入が決まっているこのセントラルMFは、ゲームメイクもできれば点も取れる、まさに超高校級のタレントだった。その松木と2ボランチを組む宇野禅斗もFC町田ゼルビアへの加入が内定している。黒田監督が「世界に誇れる」と称賛するこの2ボランチが、青森山田の屋台骨を支えていた。

 しかし、彼らふたりだけではない。今年の青森山田にあったのは、あくなき向上心と、揺るぎない団結力だろう。

 黒田監督は松木と宇野について「本当に監督、コーチのように、様々な局面で、たとえ嫌われようとも、軋轢が生じようとも、厳しい言葉を発していた」と話す一方、「彼らだけではなく、全員がしっかりと発言できるし、話を聞き入れられる。勝つためにどんなことも取り組んできたチームでした」と、チームとして勝ち取った優勝であることを強調した。

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