スペイン人監督がブラジル人に代わってJリーグを席巻中。実は出身州でサッカースタイルも違う

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 2022年シーズンに向け、Jリーグのクラブはこれから続々と始動、キャンプに入る。各チームの監督の顔ぶれに、リーグ全体の変革の波が見える。

 ひと昔前と比べると、ブラジル人監督が減って(柏レイソルのネルシーニョ監督のみ)、スペイン、セルビア、ドイツなど欧州の監督が増えた。「ブラジルはサッカー王国だが、名監督はいない」というのは欧州では定説で、実際にクラブレベルで実績を残したアルゼンチン人はあまたいるが、ブラジル人は現在に至るまで皆無に等しい。「理論的に考えられず、現代サッカーにはついていけない」とも言われる。ジーコ以来の伝統を有す鹿島アントラーズでさえブラジル路線に見切りをつけ、スイスの新鋭監督レネ・ヴァイラーを招聘した。コロナ禍でなかったら、この流れはもっと加速していただろう。

 なかでも、スペイン人監督が注目されている。

 昨シーズン、浦和レッズを率いたリカルド・ロドリゲスは、論理的アプローチによって改革に成功しつつある。プレーモデルを確立し、選手を競争させながら、血を入れ替えている。天皇杯優勝はひとつの功績で、「日本代表監督に」という意見も出るほどだ。

天皇杯を制した浦和レッズのリカルド・ロドリゲス監督天皇杯を制した浦和レッズのリカルド・ロドリゲス監督この記事に関連する写真を見る 新シーズンに向け、FC東京の新指揮官には、同じくスペイン人のアルベルト・プッチが就任している。J2アルビレックス新潟を率い、一時は昇格争いをさせるなど、ポジション的優位を高めて主導権を握るサッカーの土台を作った。リカルド・ロドリゲスがJ2徳島ヴォルティスで結果を残し、浦和に招聘された流れに近いか。

 J2徳島のスペイン人監督ダニエル・ポヤトス監督は、降格を回避できなかったにもかかわらず、留任が決まった。期待度の高さからだろう。うしろからボールをつなげ、ポゼッションで相手を上回り、攻撃に厚みを与える。目指すはモダンサッカーだ。

 スペイン人監督はひとつの流れになりつつある。

 昨シーズンは清水エスパルスで途中解任の憂き目に遭ったが、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督も東京ヴェルディ、セレッソ大阪で守りの法則をチームに浸透させた。「いい守りがいい攻撃を作る」を実現。その結果、清武弘嗣を復活させ、坂元達裕、瀬古歩夢など日本代表選手を輩出し、藤田直之、奥埜博亮にキャリアハイと言えるシーズンを過ごさせている。

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