「憲剛さんは道標」谷口彰悟が学んだ主将としてチームを引っ張る姿勢 (3ページ目)
◆中村憲剛・独占インタビュー。「引退発表した今だから話せること」>>
谷口がCBとしてプレーする自分を受け入れたことによって、17年のJ1初優勝もあれば、18年のJ1連覇にもつながった。中村の言葉がすべてではないだろうが、間違いなく谷口が守備の柱へと成長する契機だった。
今季からキャプテンを務めている谷口。中村らの姿を見て、自分なりの主将像をつくってきた リーグ優勝を逃した昨年のオフもそうだった。川崎のかつてのキャプテンであり、「背番号14」の前任者である中西哲生氏との食事会に、中村は谷口を誘ったのである。
「憲剛さんとふたりで食事に行く機会もなかったですし、哲生さんと3人で食事に行くのも初めてでしたからね。それだけで緊張します。自分が行っても大丈夫なのかなと思ったくらいです」
その席で聞かされたのは、クラブへの思いであり、谷口に対する中村の思いだった。
「キャプテンやれば? そうすれば、選手としても、さらにひと皮剥けると思うよ」
今シーズンの開幕を迎えるにあたって、鬼木達監督からキャプテンに任命された谷口は、中村の言葉を思い出していた。
「キャプテンをやることによって、自分自身も成長できるチャンスかもしれないなって思いましたよね」
その結果は言わずもがなである。今季の谷口はCBとしてだけでなく、キャプテンシーでもチームを牽引していた。
「自分ではひと皮剥けたかどうかはわからないですけど、強くなったというか、いろいろなことに対して動じなくなったように思います。以前の自分は、自分のプレーがダメだと、周りにも言えないところがあったんです。でも、今は自分がうまくいっていなかったとしても、チームとしてやるべきことは変わらない。言うべきことは言おうと思うようになりました」
中村がキャプテンをやるように促し、キャプテンをやることで成長すると言っていたのは、そこにあったのかもしれない。
CBになってからは、14番の勇姿をずっと後ろから見守ってきた。
「だから僕が思い浮かべるのは、あの背中なんです。スルーパスを出す背中、シュートを決める背中。その姿が焼き付いている」
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