2020.11.06

中村憲剛・独占インタビュー。
「引退発表した今だから話せること」

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

中村憲剛インタビュー@前編

 一生に一度の機会を終えた中村憲剛は、安堵感に包まれていた。

「(会見の場は)いつも知っている部屋なんですけど、あまりにも厳かな雰囲気だったので、自分も緊張してしまいました」と笑った。

 11月1日、川崎フロンターレひと筋でプレーしてきた"バンディエラ"は、今シーズン限りで現役を引退することを発表した。

FC東京戦でゴールを決めた翌日、まさか現役引退を発表するとは... 幸運にも、引退を発表する前と発表したあとに、話を聞く機会に恵まれた。

 鬼木達監督に告げたのは、J1第23節の名古屋グランパス戦後だったという。試合が続いていたため、久々の長期オフが明け、練習が再開した10月23日のことだった。

「入団からここまでずっとお世話になってきた庄子(春男)GMには、3月くらいに話していたのですが、オニさん(鬼木監督)には、名古屋戦が終わってオフが開けた時に伝えにいきました。タイミング的には不自然ではなかったと思います。

 だから、きっとオニさんも、自分がそんな話をするとは思っていなかったはずです。その前にも、ルヴァンカップのFC東京戦(10月7日)のころに2時間くらい話をしたことがあったので。その時に伝えようかとも考えたのですが、試合が続くし、このタイミングで話すのは申し訳ないなと思ったので黙っていました。伝えるなら、自分がチームの勝利にもっと貢献できたあとかなと。

 そして、そのあとに来た名古屋戦にスタメンで出してもらい、勝利に貢献できたなという手応えのある試合ができたこともあって、次の試合まで約2週間空いたこのタイミングだよねと、妻と話していたんです。現場の長であるオニさんに話すことで、すべてが始まる。そう思っていましたから」

 練習後、鬼木監督の部屋を訪れ、部屋にあるソファーに座った。取り繕うことなく、単刀直入に言った。

「オニさん。今年でやめます」

 鬼木監督は「えっ」と言って驚いたあと、「嘘だろ?」「本当に?」と、何度も、何度も聞き返したという。