中村憲剛が妻の手紙で知った想い。
「終わりがあるからこそ美しい」
中村憲剛インタビュー@後編
40歳で現役を引退する----。
川崎フロンターレの中村憲剛は、35歳の時に決断していたという。妻の加奈子さんにだけ、心根を打ち明けてきた。
だから、39歳になった2日後に行なわれた試合で、左ひざ前十字じん帯を断裂する大ケガを負ったあとも、すぐに頭の中を切り替え、残された現役生活を全うできるようにと、リハビリを続けてきた。もちろん、その念頭には「戻るならば、完璧な中村憲剛の姿で」......という大前提があった。
中村憲剛は5年前に40歳での現役引退を決めていたという 復帰戦となった8月29日のJ1第13節の清水エスパルス戦では、途中出場からゴールを決めた。キャリア初となる10月31日の誕生日に行なわれたJ1第25節のFC東京戦では、決勝弾を挙げて40歳の節目を自ら祝った。指揮官である鬼木達監督が引退を引き留めたように、誰しもが「まだできる」と思うほど、中村のプレーはピッチで際立っている。
それは、復帰してから今日までの話だけではない。むしろ、40歳での引退を決意したという35歳を過ぎてから、彼はずっと階段を駆け上がっている。
それだけに、約10カ月に及ぶ離脱期間があった今、自身に課したリミットを延長してもいいのではないかとすら思ってしまう。それを本人にぶつけると、こう返事があった。
「むしろ、この1年間でもいろいろな経験をさせてもらってきたんです。ここまでの選手人生で経験してこなかったところ、足りないところを最後に全部経験して引退できるなと思ったんです。
とくに35歳になってからは、それが一気に自分に来た。36歳でJリーグのMVPに選ばれて、37歳でJ1初優勝、38歳でリーグ連覇、39歳でルヴァンカップ優勝に、人生初めての大ケガ......そこからのリハビリと復帰。毎年、毎年がすごく濃かったんです。
でもね、それはたぶん、あと5年って決めていたからだったと思うんです。終わりが明確に決まっていることによる1年1年の自分の覚悟が違ったから。毎年、毎年、カウントダウンされていくから、4年、3年、2年......と。
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