阿部勇樹、恩師を語る「オシムさんがいなかったら、今の僕はいなかった」 (4ページ目)
ひとりで監督室を訪れた阿部は、オシムに向かって「みんなが『休みがほしい』と言っています」と言った。すると、オシムは鋭い目つきで阿部を見返して、こう言った。
「そんなことを言っているのは誰だ。言っているヤツを連れてこい」
そもそも阿部自身は「ダメもと」だと思っていたので、いい返事は期待していなかった。想定どおりの回答に、阿部は何も言えず、そのまま引き下がった。そして、オシムの言葉をそのまま選手みんなに伝えた。
納得できない選手たちは、今度は選手会長の茶野隆行と阿部の2人をオシムのところに行かせた。今度は、オシムは2人を諭すようにこう言った。
「休みから学ぶものは何もない。サッカー選手であるうちは、24時間サッカーのことを考えるべきだ。遊ぶのは(サッカーを)やめてからでもいいだろう。もっとも休みの日も遊びに行くのではなく、翌日から練習が始まることを考え、そのためにどう過ごすべきかを考えるべきだ」
オシムの言葉は厳しかったが、プロサッカー選手として働いているからには、いいプレーを見せることに責任と義務を負う必要がある、ということを選手に伝えたかったのだ。
オシムは、選手だけに「24時間サッカー漬け」の日々を課しているわけではなかった。自らも家に帰れば、次の対戦相手の試合映像を見て対策を練り、欧州サッカーの試合映像などを見て戦術・戦略アップを探り、それこそ寝る間を惜しんで、サッカーの探求を重ねていた。
そのうえで、サテライトやユースの試合も積極的に見に行った。いつしか、そのことが選手全員に知れ渡ると、誰も「休みをくれ」と表立って言わなくなった。
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