阿部勇樹、恩師を語る「オシムさんがいなかったら、今の僕はいなかった」 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

 オシムがチームに合流したのは、シーズン開幕前の韓国キャンプだった。阿部はまず、オシムの存在感、その迫力に圧倒されたという。

「体が大きくて、鋭い目つきで、しかもオーラがあって......。最初から、存在感がすごいなって思いましたね」

 オシムは、チームに合流してからすぐに「相手に走り勝つこと」をテーマに掲げ、選手をみっちり鍛え始めた。「ジェフ陸上部」とも言われた、走りに重きを置いた練習に悲鳴を上げ、不満をもらす選手もいたが、オシムは自らのやり方を曲げることはなかった。

 リーグ開幕前、それに先駆けて始まるナビスコカップ(現ルヴァンカップ)の予選リーグに臨む数日前のことだった。阿部は、江尻篤彦コーチに呼ばれ、こう言われていた。

「阿部、おまえがキャプテンだ。頼むぞ!」

 まさかのキャプテン指名に、阿部は驚き、声を失った。

「(自分は)まだ21歳で、経験も実力も足りない。チームの中にはほかに、経験豊富で年齢が上の選手がたくさんいる。『なぜ、自分なんだろう』って驚いたし、『なんで、あいつなんだよ』って思っていた人も多かったと思うんですよ。だから、正直『マジか。やりづらいな......』って思いましたね」

 キャプテンを任されたことについて、オシムからは直接、何も言われなかったという。

「(オシムからは)『こんなふうにやってくれ』とも、『こんなキャプテンで』とも、言われなかったですね。『なんで、自分がキャプテンなんですか?』と、聞きに行くこともなかったです。だって、聞きに行ったら、いかにも『イヤだ』という感じじゃないですか。

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