ヴェルディユース初の教え子の最終戦で、
永井秀樹監督は何を語ったか (4ページ目)
そんな状況にありながら、世代別日本代表で背番号10をつけ、トップ昇格も内定しているMF藤本寛也(ふじもと・かんや/3年)と、不動の守護神・GK田中颯(たなか・はやて/3年)のふたりを出場停止で欠く苦境にあった。
その分、メンバー選考には苦労したはずである。とりわけ、田中に代わるGKを誰にするのか、頭を悩ませたのではないだろうか。
熟考の末、永井は代役に1年生の佐藤篤輝(さとう・あつき)を指名した。
佐藤は前節、田中の退場で急遽出場しているが、それがプリンスリーグ初出場だった。要するに、ユース昇格後、佐藤の公式戦出場はこの日が2試合目。彼のスタメン起用は、まさに大抜擢と言えた。
天気は晴れ。木の葉が細かく揺れる程度の風が吹いていた。
午後1時、永井監督率いるヴェルディユース初年度の集大成となる試合開始を告げるホイッスルが、寒空のよみうりランドに響き渡った。
選手たちは普段以上に気持ちが入っていた。それは、ピッチから伝わってくる熱気で十分に感じられた。
ところが開始3分、永井曰く「さすがにあれは予想外」という、まさかの出来事が起こった。
スタメンに抜擢したGK佐藤が、足もとのボールを奪われる痛恨のミス。いきなり失点を喫してしまったのだ。
「(佐藤に)『3年生にとって最後の公式戦のゴールを任された』というプレッシャーがあったにせよ、何でもない場面でのあり得ない凡ミス。1年生で初スタメンだから、『ある程度、周りのサポートは必要かな』とは思っていたけど、さすがにああいう形でのミスは想定外だったな」
試合後、永井はあの場面をそう振り返ったあと、軽く笑みを浮かべて「でも、佐藤にとってはとてもいい経験になった」と付け加えた。
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