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証言でたどる「ベンゲルがいた
名古屋グランパス」がもたらしたもの (4ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

ヒディンクとのやりとりと、ベンゲルの印象を語る小倉隆史 photo by Fujita Masatoヒディンクとのやりとりと、ベンゲルの印象を語る小倉隆史 photo by Fujita Masato この後、ベンゲルは来日するまでにグランパスの試合映像をくまなくチェックし、シーズンオフに選手が取り組むべきフィジカルメニューをクラブに送っている。
 
 もっとも、当時は今ほど情報網が発達していない時代である。ましてやモナコは欧州チャンピオンズカップ(現UEFAチャンピオンズリーグ)の常連というわけではなかったから、ベンゲルの名前や功績は、日本サッカー界ではよく知られていなかった。

「名前ぐらいは知っている。そんな感じでした」

 欧州サッカー通として知られる小倉にしても、認識はその程度だった。だが、在籍する6人の外国人選手のうち、ドラガン・ストイコビッチ(ピクシー)以外を入れ替えるというベンゲルの意向を知り、小倉は納得した。

「ヒディンクは、ピクシー以外は全員替えると言っていたんです。そうしたら、ベンゲルも同じ考えだと聞いて、なるほど、一流監督は考えることが一緒なんだなって」

 一方で、守備的MFとしてプレーしていた中西哲生は、「正直に言うと、ベンゲルのことはまったく知りませんでした」と明かす。こちらの感想の方が、一般的なものだっただろう。

 しかし中西は、この未知の指揮官に大きな期待を抱いていた。

「ピクシーが『ナカ、素晴らしい監督が来るぞ』って興奮していたんですよ。そのピクシーの喜びようを見たら、期待しないわけにはいかなかったですね」

(つづく)

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