浦和の命運がかかる大一番で下された、
エース・福田正博への非情采配 (7ページ目)
福田が自分の感情をうまくコントロールできないままプレーしていたように、チーム全体も点を取ることばかりに意識が向いて、もはや組織や連係などなく、ポジションもバラバラになっていた。
「(選手は)みんな、一生懸命やっていた。でも、みんな(動きは)バラバラだったね。FWが4、5人もゴール前にいて動きが重なるんで、『これじゃあ、点は取れない』と思っていた。完全に自滅するパターン。バランスよく選手を配置して、それぞれが役割を冷静にこなして戦えればよかったけど、チームとして連係がとれていなかった」
ピッチ内では、選手それぞれの思惑が交錯し、混乱を深める一方だった。焦る気持ちが募る中、広島のペナルティーエリア周辺は、味方選手と相手選手とで大混雑となり、スペースなどまったくなかった。それでも、福田は「来い!」とボールを必死に呼び込んでいた。
浦和が完全に前がかりになっていて、後ろに残っているのはふたりほど。カウンターを食らえば、いつやられてもおかしくない状況にあったが、ここまできたら一か八かである。90分間で決着がつかなければ、J2に落ちてしまうのだ。
福田はひたすらボールを呼び続けた。
「俺がゴールを決めるから」――。
だが、バラバラになってしまったチームの攻撃から、決定的なシーンは生まれなかった。そして、終了のホイッスルへ向かって時間は刻々と過ぎていった。
(つづく)
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