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鹿実も野洲も『時之栖』をステップに高校サッカー日本一になった (4ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki

 もちろん、時之栖という一企業が行なう"商売"である以上、すべてを理念という名のきれいごとだけで進めているわけではない。もちろん、そこにはこうした大会を開くことのメリットもある。

「まずは、時之栖という施設を知ってもらうきっかけになるということです。もし高校時代に使ってもらえれば、今度はその選手が大学生になったとき、あるいは社会人になったときにも使ってくれるかもしれない。そうしたリピーターを増やすことは、我々のような施設にとって大事なことですから」

 そのためにも、やはり重要なのは「プレーヤーズファースト」。自分たち本位であれこれ策を講じるのではなく、高校の監督たちに話を聞いてニーズに応える。その姿勢が大切だと、阿山さんは言う。

 阿山さんはときには監督たちと酒を酌み交わしながら、愚痴のはけ口になることもある。だが、そのおかげで、自然とさまざまな情報が集まってくるようになった。最近では、こんなことを言われることが多くなったという。

「お前のところに行っても、試合しかないからな」

 要するに、大会に出場すると試合はできるが、その間に練習ができなくなるというのである。試合をすれば課題も出る。試合後に練習をし、課題を修正してから次の試合に臨みたい。チームを率いる監督にしてみれば、そんな希望があっても不思議はない。

 実際、試合会場に指定されているグラウンドに試合開始時間より早めに行って、練習しているチームも少なくないという。特に高校生の場合、大会は春休みや夏休みを利用して行なわれることが多い。せっかくの長い休みなのだから、そこでチームを鍛えたい。そう考える指導者がいるのは当然のことだった。

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