鹿実も野洲も『時之栖』をステップに高校サッカー日本一になった (3ページ目)
当然、大会が充実してくるにつれ、さまざまな企業から「冠大会にしないか」との誘いを受けるようになる。だが、阿山さんはこれをことごとく拒否。「企業の色を出したいだけの大会になるのは嫌だったので、断っていました」という。
「出場する高校が本気でこの大会に臨んでくれなくなり、2番手のチームを連れてきたりするようになれば、せっかく強化・研修を目的に大会を開いても意味がなくなってしまう。だったらスポンサーに頼らず、自分たちでチームを集めて、自分たちのやりたいようにやったほうがいいと思ったんです」
ところが、前言撤回。時之栖カップは今年1月に開かれた大会から、ニューバランス フットボールを特別協賛に迎え、大会名も新たに「ニューバランスカップ」として開催されるようになった。そこには、どんな変化があったのだろうか。阿山さんが語る。
「ニューバランスさんの理念に共感し、お互いの利害が一致したということです。利用者のためにもなると考え、冠大会にすることを決めました」
そして、阿山さんはこうも続ける。
「阿部先生がそうだったように、やはり大事なのは、『プレーヤーズファースト(選手最優先)』という考え方。現場や子どもたちにメリットがないならば、冠大会にする意味はありません」
今年の夏休みには時之栖スポーツセンターで、新たに「ニューバランスチャンピオンシップ」が行なわれる。この大会は、公式戦の出場機会が少なく、日本サッカーの強化における"エアポケット"となっている中学1年生、高校1年生を対象にした大会として企画されたものだ。
阿山さんがこう説明する。
「中学、高校の大会はどうしても3年生が中心になり、1年生はなかなか試合に出られない。我々としても1年生を強化しなければいけないなと考えていたところ、 ニューバランスさんも同じことに着目していて提案があり、、『(大きな大会を)ひとまとめにやれる場所はうちしかないだろう』ということで、時之栖で開催することになりました。中学高校の1年生を強化することは日本サッカーの課題となっていますから、世の中に定着させたい大 会だと考えています」
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