豊田陽平インタビュー「今季の鳥栖は甘えが出ている」 (5ページ目)
「30歳を超えて結果を残せている選手を見渡すと、いくつかのことに気づいたんです。例えば、一つのことに秀ですぎてもダメだな、と。何かに秀でているのはプロにとって必要なことですが、それに頼りすぎてしまうと加齢には抗えない。常に自分を見つめて考えることが、選手には必要でしょう。30歳になる前から、うまくもない自分がどうするべきか、と人を観察しながらずっと突き詰めてきました」
彼には一つの哲学がある。
「考えていないと、行動には移せない」
それは当たり前のことなのだが、行動せよ、という前に思慮ありき。彼は思考と行動を結びつけてきた。
「日々の体のケアやチームの中で個人のプレイスタイルをどう生かすか、そういうことを考えている人だけがプロの世界は生き残っています。僕のような下手くそな選手は、そこを追求しないとやってこられなかった。やれること、できないことはあるんですが、考えることで自分を変えられる可能性も広がりますから」
所属する鳥栖はファーストステージで11位と昨季よりも低迷しているが、エースは苦境を憂いつつも論理的だった。
「今までとほとんどメンバーは替わっていないわけだから、できないわけがない。やっぱりメンタルなのかなと思いますね」
胸の内側のささくれをそぎ落とすような口調で、豊田は言う。
「どこかに甘さが出ているんだと思います。それがわずかでも“ボタンの掛け違い”になっている。メンタルのところで崩れちゃっているなと。そういうときはマイナス面ばかりが見えちゃうんですよ。いいときも悪い面は必ずあるんだけど、そこにフォーカスされない。敵がシュートを外して救われ、運でなんとかできていたり。いいときはマイナス面を感じないんですが、悪いときは悪いことばかりを感じ、スパイラルに入ってしまう。
それを止める一番の薬は、無失点に抑えて勝つことです。そうすれば自信が回復する。プラスの部分を見られるようになって、いい精神状態で戦えれば自然と結果も付いてくる。どんどん良くなってくるんです。開幕前に話したように、このメンバーでタイトルを取ることが自分の目標。絶対に取れるはずです。全員が甘さに気づき、慢心せず、自信を取り戻す。それだけですよ」
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