豊田陽平インタビュー「今季の鳥栖は甘えが出ている」 (3ページ目)
「年齢を重ねることで考え方が落ち着き、その分、余裕が出たのかなと思っています」
4月の誕生日で30歳になった豊田は、左手で箸を使いながら麺つゆにつけた蕎麦を唇で勢い良くすすった。
「若いときは身体能力が売りだったので、例えば“高さでは誰にも負けない、空中戦は全部勝つ!”という気持ちでやっていました。“最高到達点でボールを捉える”とか。でも、ただ高いだけなんて、本当に無意味。局面によっては、“勝てないな”と判断したら、瞬時に切り替え、“自分が触れないなら、相手にも競らせない”という駆け引きをすればいい。ヘディングはポジション、タイミングの二つが大事ですよ」
前日のFC東京戦でも、豊田は最終ラインに有効なダメージを与えていた。ヘディングはすべて勝ったわけではないが、ほとんど負けていない。体勢が悪いときは五分五分の争いで優位を与えず、ときにファウルを奪うことで相手の流れを断ち切っている。敵陣に打ち込んだ杭のようになり、味方にとっては足かがりに、敵にとっては目の上のたんこぶになった。
戦い巧者の柔軟さが出たのは、CKの場面だ。
「試合に入る前には、別のプランがありました。コーナーでは、東京はニアで(ボールを)すらされて失点しているシーンが多かったので、そこに入るか、もしくは、弱さのあるファーポストで勝負しよう、と計画していたんです。でも、モリゲ(森重真人)が厳しくマークにきたので、まずは彼に競らせず、同時に(ニアで動かずに守る役をしていた)高橋秀人の周りをぐるぐる回り、一人で二人、ひきつける作戦に変えました。それによって自分は満足に競れずに得点の可能性は低くなるので、賭けでした。でも、先制点は狙い通りでしたよ」
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