サッカー日本代表に鳴り響く12年前の敗北からの警告 構造的欠陥を「自信」が覆い隠した (3ページ目)
【期待感はバブルに近い】
その後、日本はギリシャに0-0と引き分けて生き残った。決勝トーナメント進出のためには勝利が絶対条件のコロンビア戦は、前半17分にPKで先制を許したが、前半アディショナルタイムに岡崎が同点弾を決めて追いついた。しかし、後半はハメス・ロドリゲスなど主力を投入されたことでコテンパンにされて1-4と大敗し、グループリーグ敗退が決まった。威勢がよかった「自分たちのサッカー」は完全に失敗した。
流れとしては、ジーコジャパンに似ているかもしれない。攻撃的な志向は悪くなかったが、大会前に自分たちの力を過信し、強度や守備力で劣り、あっけなく初戦でつまずく。2戦目でスコアレスドローも、3戦目は力の差を見せつけられて大会を去るパターンだ。
このブラジルワールドカップから4年後のロシアワールドカップに向けて、日本代表はセンターバックでは吉田麻也が著しい成長を見せ、酒井宏樹、長友佑都のサイドバックも盤石になった。サイドアタッカーには、ひとりで崩し、サイドにふたもできる乾貴士、原口元気が加わり、手数をかけなくても崩せる形ができた。中盤の長谷部誠が円熟期を迎え、攻守のバランスが取れたチームとなり、ベルギー戦はベスト16で散ったが、それは日本のワールドカップ史上ベストゲームだった......。
今回の森保ジャパンは、率直に言って、ロシアワールドカップの時から、停滞というよりむしろ後退しているように見える。総合的な戦力は向上しているが、チームとしての戦いが場当たり的で再現性に欠けるのだ。そもそも、相手に攻められることを想定したチーム構造だけに、ブラジルやイングランドとの戦いではそれがハマるが、スコットランドやアイスランドには勝ったものの、攻めあぐねている。
事態を改善させるために、もし森保監督が、たとえば長友の明るさや野心のようなものに「奇跡」を期待しているなら、それは無理筋だろう。
ちなみにアイスランド戦の長友の出来は、とても評価できるようなものではなかった。パスミスから危うく失点になりかけていたし、マークすべき相手から離れて真ん中に寄って決定機を招いていた。久保建英が右から中へ鬼のようなカットインでシュートに行くところでは、不必要に相手のバックラインに入って自らシュートブロックしていた。それでもほとんど批判の声が聞こえないのは、一般大衆も長友の「奇跡」を信じているからなのか。
そしてまたも「ワールドカップ優勝」という"夢"を見ている。今回はなんと監督自ら「大和魂」でそれを勝ち取る意志を表明した。期待感はもはやバブルに近い。12年前の敗北の記憶からの警告は鳴り響いている。
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著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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