ワールドカップで楽しみな才能溢れる10代選手のデビュー サッカー日本代表にもその候補がいる
西部謙司が考察 サッカースターのセオリー
第93回 佐藤龍之介&ヒルベルト・モラ
日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。
かつてのペレのように、今回の北中米W杯でも10代でデビューし、活躍しそうな選手がいます。近い将来チームのエースとなるスター候補。日本とメキシコに、その可能性を持つ佐藤龍之介とヒルベルト・モラがいます。
佐藤龍之介の10代でのW杯デビューはあるか photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る
【10代のW杯デビュー】
1958年スウェーデンW杯、ペレは17歳で世界チャンピオンになった。開幕時には控え選手だったが、準々決勝のウェールズ戦で決勝点、準決勝フランス戦でハットトリック、決勝のスウェーデン戦で2ゴール。とりわけDFの頭越しにボールを浮かせて決めた得点は印象的で、このW杯の活躍で一躍世界のスターになった。
1978年W杯では開催国アルゼンチンが初優勝。もし17歳のディエゴ・マラドーナが出場していたら、かつてのペレのような活躍をしたかもしれない。だが、マラドーナは最終選考で外されてこの大会には出場していない。セサル・ルイス・メノッティ監督は「プレッシャーの大きいW杯に出場させて潰すわけにはいかない」と考え、マラドーナを選ばなかった。
ペレとマラドーナは17歳の時点ですでに国内リーグで十分な実績を示していた。どちらもサッカー史上最高クラスの才能であり、W杯に出場できたか否かはその時の状況の違いにすぎない。ただ、1978年のマラドーナが20歳だったら間違いなく選出されていただろうし、その時点ですでに不可欠な選手だったはずだ。
代表選考において、10代という年齢が難しいのだ。1978年のアルゼンチンは軍事独裁政権下にあり、10代の選手が多大なプレッシャーにさらされるべきでない、というメノッティ監督の判断は真っ当であったと思う。能力的には選びたかっただろうが、10代で、しかもプロ2年目の「子ども」を危険にさらすべきではない、と考えるのはもっともである。
北中米W杯にも10代の選手はほぼ確実に出場する。
ラミン・ヤマル(バルセロナ)は18歳。ペレが世界デビューを果たし、マラドーナが涙をのんだ年齢とほとんど変わらない。ただし、ヤマルはすでに世界的なスター選手であり、スペイン代表にとって不可欠な存在になっている。ユーロ2024優勝に大きく貢献した実績もある。ペレやマラドーナの時代とは、同じ10代でも経験値が違う。
ブラジルのエステバン、アルゼンチンのフランコ・マスタントゥオーノもW杯でプレーする準備ができている選手だろう。エステバンはチェルシーで、マスタントゥオーノはレアル・マドリードでプレーしている。彼らはペレやマラドーナほどの天才ではないが、大きな舞台は経験済みであり、プレッシャーへの耐性もある。すでに大人の保護を必要としないプロ。エクアドルのケンドリー・パエス(リーベル・プレート)も18歳だが、すでに代表20試合を超えている主力だ。
彼らはいわば「作られた」選手たちで、トップレベルでプレーするために精神的、肉体的な準備がすっかりできている。育成環境の進化はより早熟な選手を生み出しているのだ。
著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。





















































