サッカー日本代表メンバーは今回もバランスに問題あり アメリカ遠征の失敗は生かされず (3ページ目)
【ブラジル戦でウイングバックはどうなるか】
今回、とりわけブラジル戦は押される展開になることが予想される。左右の高い位置に両ウイングを置くブラジルに対して、3-4-2-1で臨めば、両ウイングバック(WB)は自ずと後退する。低い位置で構えることが予想される。
だが選んだWB候補の顔ぶれは大半が、4バックではウイングを務めるアタッカーだ。伊東、相馬、前田、堂安、中村、斎藤、望月の7人のなかで、例外は望月のみ。バランス的に問題ありだ。格上に対してアタッカーを最後尾に据えて戦おうとしている。無謀と言わざるを得ない。
中村が最後尾に留まる時間が増えれば、中村の魅力は減退する。後方での守備に奔走する中村は本来の中村ではないのだ。相手に怖さを抱かせることはできない。
そしてSB系の選手はごく僅かしか選ばれていない。バランス的に問題ありだ。対応の幅は狭くなる。先のアメリカ戦で、3バックから4バックへの移行をテーマに掲げながら、それがスムーズにできなかった理由だ。CBの瀬古を左SBで起用すれば、左のサイド攻撃が円滑にならないことは火を見るより明らかである。それが森保監督にわからないのだろうか。
今回のメンバー構成から、その反省は見えてこない。SBをこなすことができそうな選手は望月がせいぜいだ。左は見当たらない。長友を戦力として見るなら、彼だけになる。サイドを押し込み日本のWBを後方に押し下げることができれば、相手はしめたものだ。それをよしとする森保監督には懐疑的にならざるを得ない。
アジアの格下相手では露呈しない問題だ。両WBが専守防衛を強いられるケースはほとんどない。この考え方を改めないと本大会は戦えない。メンバー発表会見でもそうだったように、「優勝」という言葉を目標として普通に口にする森保監督だが、ウイングをWBとして起用するサッカーは、まさに強者の論理だ。世界ランク19位の日本は、もっと謙虚でなければならないのだ。
特にブラジル戦。ピッチ上、とりわけサイドにどんな絵が描かれるか。サイドを制するのはどちらか。少なくとも相手の監督、カルロ・アンチェロッティには難しい設問ではまったくないだろう。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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