唯一OAゼロでパリ五輪に挑むU-23日本代表が強豪フランスとドロー 手にした自信と見えた課題 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【引っかかった1トップの起用法】

 大岩剛監督は、後半の頭から3人を入れ替えている。ひとつは関根と大畑歩夢の交代で、大畑を戦術的交代で左SBに回し、前半左SBを務めた半田を右SBに回した。残るふたつは木村と西尾隆矢、藤尾と細谷真大のシンプルな入れ替えだった。フランス戦と言ってもしょせんはテストマッチ。本番ではない。できるだけ多くの選手を使い、五輪本番の中2日の強行軍に備えようとする日本ベンチの狙いに共感することはできた。

 しかし、日本はまさにそのタイミングでフランスの同点弾を許した。後半開始2分。交代で入るや右のウイング然と構えたマグネス・アクリウシェ(モナコ)が、対峙する大畑を相手に仕掛けの動作から中央へボールを送ると、オーバーエイジのFWラカゼットがヘッドで落とす。それを2トップ下で構えるミカエル・オリーズ(バイエルン)に蹴り込まれた。3人を入れ替えたことで後半の入り方を間違えたという印象である。大畑とアクリウシェの関係に、特にそれは見て取れた。

 選手交代を優先するが故のテストマッチにありがちな、仕方のない失点と捉えることはできる。だが、ここで失点していなくても、その後の流れを見ればいずれ失点した可能性は高い。嘆くべきはフランスに同点弾を許したことよりも、日本がきちんと攻められなかったことだと考える。

 ほぼ中2日で6試合を戦う五輪において、ベストメンバーはあってないもの。スタメンとサブの境界はないに等しいと考えるべきだろうが、それでもこのフランス戦に先発した11人は、これまでの経緯を辿れば、基本線となるベストに近い布陣に見えた。

 そのなかで唯一、引っかかりを覚えたのが、細谷ではなく藤尾が起用された1トップになる。大岩監督の中で1トップの優先順位は変化したのだろうか。前半プレーした藤尾の出来が特段よかったわけではない。しかし後半、細谷が入ると、事態はさらに悪い方向に進んだ。後半のほうがチャンスは構築しにくくなっていた。

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