元ヤングなでしこ・田中陽子はなぜ韓国でプレー?「いつかプレーしたい国ではあった」昨季は国内で大逆転優勝を経験 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko

【スポーツの醍醐味を味わった】

――しかも韓国チャンピオンになって、AFC女子クラブチャンピオンシップ(AWCC)2023決勝で日本に凱旋することにつながっていくんですもんね。

(ラージョ・バジェカーノ・フェメニーノにいた)3年前では考えられなかった流れです。これもいろんなタイミングが重なってますよね。決勝が一旦消滅したりもして、でも、あれよ、あれよという間に開催が決まったじゃないですか。できればベストな状態で臨みたかったですけど(苦笑)、直前の試合で肉離れになっちゃったんです。あの時は3日に1回くらいのペースで試合をこなしていて、チームはリーグ戦1戦ごとにひとり負傷して欠けていくようなサバイバル状態。自分もそのひとりになっちゃいました。

 攻撃側は、代表選手も外国人選手もいなかったんですよ。そういうところも残念すぎた。バチバチで戦いたかったというのが本音です。それでも出場したメンバーが(三菱重工)浦和レッズレディースに意外にも食らいついて、粘りを見せてくれたと思います。(※結果は2-1で浦和の勝利)

――粘りというと、昨シーズンのような感じの粘りですか?

 ああいう粘りは、ウチのチームのいいところです! このチームって去年、優勝が難しい感じだったんです。今までの仁川現代はずっと首位で、大差で勝つのが当然だったんですけど、それが最近は難しくなってきていました。

 去年は第1クールでかなり負けて、下から3番目とかまで落ちたんですよね。でも第2クールから全勝の勢いで、第3クールはライバルの2チームも調子を上げてきて首位は取られてたんですけど、最終節は1位と2位が直接対決で、仁川現代は3位。どっちかが勝ったらそこが優勝で、ウチは上位が引き分けた上で大量得点が必要でした。

 ところがウチは大勝で試合が終わって、1位と2位の試合が終わるのをピッチ上で待ってたら......ドローに終わって優勝が決まったんです! こういうの、たまらないですよね。スポーツの醍醐味を味わえています。

後編「田中陽子が感じるなでしこジャパン」へつづく>>

田中陽子 
たなか・ようこ/1993年7月30日生まれ。山口県山口市出身。中学からJFAアカデミー福島に所属。2010年のU-17女子W杯では準優勝に貢献。2012年INAC神戸レオネッサに入団。同年に日本で行なわれたU-20女子W杯で活躍、3位の原動力となった。2015年にノジマステラ神奈川相模原に移籍し4シーズン半プレー。2019年からはスペインへ渡り、スポルティング・ウエルバ、ラージョ・バジェカーノ・フェメニーノに所属。2022年からは韓国の仁川現代製鉄レッドエンジェルズでプレーしている。

プロフィール

  • 早草紀子

    早草紀子 (はやくさ・のりこ)

    兵庫・神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。在学中のJリーグ元年からサッカーを撮りはじめ、1994年からフリーランスとしてサッカー専門誌などに寄稿。1996年からは日本女子サッカーリーグのオフィシャルカメラマンも担当。女子サッカー報道の先駆者として、黎明期のシーンを手弁当で支えた。2005年より大宮アルディージャのオフィシャルカメラマン。2021年から、WEリーグのオフィシャルサイトで選手インタビューの連載も担当。

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