パリ五輪でなでしこジャパンをメダルへ導くFWは誰? 昨夏のW杯得点王もメンバー入りへ猛アピール中 (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko

【宮澤ひなたはウイングバックでもプレー】

 一方、昨夏のW杯得点王・宮澤ひなた(マンチェスター・ユナイテッド)は悩み抜いていた。W杯後さらなる活躍を期待されていたなか、昨年11~12月のブラジル遠征で右足首を骨折。万全な状態ではないなか4月のSheBelievesCupには招集されたが、そのほとんどを感覚を戻す作業に費やした。

 今回は出遅れた分の巻き返しが必要な機会だったが、初戦後、彼女から出てきたのは、「得点王って見られるけど......」との言葉。プレッシャーを感じているようで意外だった。というのも、この試合の直前までの彼女はそのプレッシャーを力に変えていたからだ。

 しかし、初戦を見れば彼女の落ち込みも理解できる。初めて組む左サイドのコンビネーションがうまく機能しなかったのだ。

 前線の左に入り、外を駆け上がる北川の進路を担保し、トップの田中美南(INAC神戸レオネッサ)の負担を少なくするために相手DFをブロックする。ところがボールに全く触れない。時間が経過しても状況は改善されなかった。

 それでも北川のよさを生かし、自分も生きる道筋を探るべく、左DFに入っていた古賀塔子(フェイエノールト)ともコミュニケーションを取り、中二日で突破口を見い出そうとしていた。

 第2戦は再び北川とコンビを組んだ。午前中に北川と、そして左DFに入る南萌華(ローマ)ともしっかり話をして、ビジョンを共有して臨むことができていた。

 その結果、修正したプレーが見られた。「初戦よりもボールに触れたし、抜けることもきた。ひかるさんとも『この前よりもやりやすいね』と同じ感覚を持てました」(宮澤)。

 そして後半、千葉玲海菜(フランクフルト)が入ると宮澤は左のウイングバックに下がった。チームのウイングバック不足のための新たなトライだ。練習でも入ったことがあり、その可能性は頭には入っていた。

「なんか懐かしかったです(笑)。(昨年の試合で)(遠藤)純(エンジェル・シティ/負傷離脱中)が中をうかがう時、自分はあの位置(ウイングバック)にいたから。久しぶりに前のスペースが開けて存分に走れるし、自分が苦しんだからこそ玲海菜に『そこまで落ちなくていいよ』って言えた。後ろから見える景色を知れたのは、今後、前に戻った時にやりやすくなります」(宮澤)。

 彼女に守備のイメージは全くないが、ひとつの可能性を示すことはできただろう。

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