日本代表の「攻撃的3バック」は「改悪」 ミャンマーだからボロが出なかった
2026年W杯アジア2次予選、日本がミャンマーにアウェーで5-0と勝利した一戦は、森保一監督が"オリジナリティを発揮"した一戦と言い換えてもいい。
ミャンマーは日本と100回戦っても勝てそうもないFIFAランキング163位の相手だ。普通に戦っては進歩がない。新たな試みをする絶好の機会であるとの認識は、森保監督と共有することができた。問題はその中身になるが、それを語る前に、森保監督と3バックの関係を簡単におさらいしておきたい。
ミャンマー戦で先制ゴールを決めて喜ぶ中村敬斗ら日本代表の選手たち photo by Kyodo newsこの記事に関連する写真を見る 3バックが好きな監督である。サンフレッチェ広島時代はほぼそれ1択で通してきた。4分割にすれば3-4-2-1。前任のミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現・北海道コンサドーレ札幌)が採用した布陣を、自身が監督に昇格してもそのまま使い続け、そしてペトロヴィッチ以上の結果を出した。
Jリーグを3度制し、「Jリーグで最も実績を残した日本人監督」の看板を引っさげ、日本代表監督に就任したのは2018年7月のことだった。
他方、Jリーグでは広島に代わり、川崎フロンターレ、横浜F・マリノスが台頭。布陣で言えば、4-2-3-1や4-3-3がメインストリームとなった。高い位置から網を掛けようとする攻撃的サッカーである。
森保監督としては、代表監督として、流行から外れた3-4-2-1を採用しにくい状況になった。就任当初は「臨機応変」と言って方向性を曖昧にしていたが、ほどなくして、時代の流れに合わせるように4-2-3-1、4-3-3をメインに使用し始める。
だが、成功体験を完全に忘れ去ることはできなかった。グループリーグ突破は難しいだろうと言われたカタールW杯で、森保監督は突如、3-4-2-1に回帰する。結果論で言えば、その方針転換は大成功を収める。スペイン、ドイツに勝利し、予想を覆してベスト16に進出した。カタールW杯以降、3-4-2-1は4-3-3、4-2-3-1と並ぶ、立派な選択肢のひとつになった。
もっとも3-4-2-1は、4-3-3や4-2-3-1に比べると異質だ。感覚的な言い方になるが、たとえば4-3-3の"攻撃的サッカー指数"を5とするならば、4-2-3-1は4.5で、中盤フラット型4-4-2は4ぐらいになる。ところが3-4-2-1はせいぜい2だ。落差が大きすぎるのだ。
なぜ、そこまで攻撃的サッカー指数を下げなければいけないのか。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。