スペイン戦を日本代表選手たちの言葉とともにプレイバック。あの2ゴールが生まれるまで。選手たちのあきらめていなかった心境 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by JMPA

 だが、判定はインプレー。主審が改めてゴールの合図を示すと、田中はベンチに向かって走り出した。

「自分はワールドカップで点をとると、ずっと前から思っていたし、言っていた。神様がご褒美をくれたのかなと思う」(田中)

「まさか、碧が決めるのはサプライズ」(遠藤航)

 ドイツ戦に続く、電光石火の逆転劇。ワールドカップ優勝経験国を相手に、日本はまたしてもサプライズを起こした。

「そこからはもう、このまま勝ち点3を守りきるだけだった。やることははっきりしていた」(板倉)

 さらにボール支配率を高め、日本陣内に攻め入ってくるスペイン。だが、日本は懸命にこの猛攻をはね返し続けた。

「どんなにボールを入れられても、(シュートを)打たせないことをすごく意識していた」(田中)

「全員が集中しているのが伝わっていたし、絶対にスキを作らないぞと常に声をかけながらやっていた。(押されていても)ピンチを全然作られていないのは、全員が必死になって守った結果」(板倉)

 試合はそのまま2-1で終了。日本は苦戦が予想されたグループリーグをまさかの1位で通過した。

「東京五輪でやったメンバーは、悔しい思いを絶対に忘れていないし、その借りを返そうと強く思っていた。ワールドカップという舞台でそれを果たしたことはうれしい」(板倉)

「(東京五輪での)その悔しさはもちろんあったが、(今大会で)このまま終わりたくないという気持ちが本当強くて。(コスタリカに負けて)ああいう姿で終わって帰れないなと思っていた」(三笘)

 日本が2大会連続で決勝トーナメントに進出するのは、初めてのこと。新たな歴史を刻んだ日本代表は、目標であるベスト8まであと1勝に迫った。

「(スペインに)勝ったこともうれしかったが、次のステージに行けることが一番うれしかった。前回コスタリカに負けて、いろんな選手がいろいろ言われているのを見て、正直腹が立つ部分もあった。だからこそ、ここでもう一回勝って、全員で次のステージを戦いたかった」(田中)

「目標は次のラウンド16を勝つこと。その先へ行くことができれば、目標が一つひとつ上がっていく」(遠藤)

「これだけうれしいこともないし、たぶん日本も相当盛り上がってくれていると思う。ただ、目指しているところはここじゃない。まだまだ新しい歴史を作っていきたいなという思いがある」(板倉)

 ベスト8進出を目指す日本にとって、次はいよいよ大一番となる決勝トーナメント1回戦。対戦相手は前回大会準優勝の強敵、クロアチアと決まった。

(つづく)

【著者プロフィール】浅田真樹(あさだ・まさき)
フリーライター。1967生まれ、新潟県出身。サッカーのW杯取材は1994年アメリカ大会以来、2022年カタール大会で8回目。夏季五輪取材は1996年アトランタ大会以来、2020年東京大会で7回目。その他、育成年代の大会でも、U-20W杯は9大会、U-17W杯は8大会を取材している。現在、webスポルティーバをはじめとするウェブサイトの他、スポーツ総合誌、サッカー専門誌などに寄稿している。

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【profile】
中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに加入。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグMVPを受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重65kg。

佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。

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