トーナメント巧者・クロアチアに屈した日本。時に押し込まれ、時にボールを持たされ、采配でも後手を踏んだ

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

【監督の采配で後手を踏んだ】

 そんななか、森保一監督はどのように試合を運ぼうとしたのか。

 ドイツ戦、スペイン戦では、1点のビハインドを背負った状態で臨んだ後半、交代カードを迅速に切った攻撃的シフトチェンジが奏功した。

 1点リードで迎えた後半早々に追いつかれたこの試合では、64分に長友佑都に代えて三笘薫、前田大然に代えて浅野拓磨を投入。続いて75分に鎌田を下げて酒井宏樹をピッチに送り、伊東を鎌田のいた位置に配置転換すると、87分には堂安律に代えて南野拓実を投入して、伊東は堂安がいた右シャドーに移った。

 しかし、攻撃の駒を増やして前線をフレッシュにした一方、相手がリスクをかけた攻撃を仕掛けてこなかったこともあり、これらの采配は空振りに。三笘を左ウイングでプレーさせるための4バックシステムへの変更もなく、攻撃重視なのか守備重視なのか、勝ちにいくのか延長戦を意識したのか、どっちつかずの采配に終始した。

 その間、ダリッチ監督が切った交代カードは2枚のみ。62分に1トップのブルーノ・ペトコヴィッチをアンテ・ブディミルに、68分にアンドレイ・クラマリッチをマリオ・パシャリッチに代えただけで、攻撃的にも守備的にもしたわけではなく、そのままのペースを維持することを選択。自信のある延長戦での戦いを想定し、日本ベンチの動きを見ながら"後出しじゃんけん"で対抗した。

 一見、先手を打ったように見えた森保監督の采配も、延長戦の交代カードの切り方を見る限り、ゲーム運びの点では、ダリッチ監督の後手を踏んでしまった。そういう意味では、トーナメントの戦い方を熟知したクロアチアがベスト8に進出したのは必然だったと言えるだろう。

 決勝トーナメントを勝ち抜くためには、どのように戦えばいいのか。そこには、確実にグループリーグとは違った世界がある。

 グループリーグで2度のジャイアントキリングを起こした今大会の日本だったが、少なくとも強国と"がっぷりよつ"に組み、その違い、そこにある差を体感しない限り、ベスト16の壁を乗り越えるためのヒントは永遠に得られそうにない。

【筆者プロフィール】
中山淳(なかやま・あつし)
1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。

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【profile】
中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに加入。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグMVPを受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重65kg。

佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。

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