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日本中が熱狂した歴史的な一戦。明神智和が「サッカーの一番の醍醐味」を体験した代表のベストゲーム (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

 だが、こうして客観的に自分の精神状態を知る機会を得たことが、その後の落ち着きにつながった。

「こんなにフワフワしてちゃダメだ。もっとしっかりと地に足つけてやらなきゃいけない」

 覚悟が決まった瞬間だった。

「次のロシア戦は(メンバーが)どうなるかわからなかったんですけど、ワールドカップの空気感を経験したことで、そこからはすごく落ち着いて練習にも取り組めるようになりました」

 初戦はリードを守りきれず、勝ち点1を得るにとどまったが、「チームの雰囲気はいい状態でした。自分もスタメンで出るか出ないか、(試合前)ギリギリまでわからなかったけど、準備はできていました」。

 そして巡ってきた、ロシア戦での先発出場。明神にとって、記念すべきワールドカップ初出場である。

「もう、やってやろう、と。それしかなかったですね」

 それまでにも、満員の観衆のなかでプレーした経験は何度もあった。スタジアムがどんな雰囲気になるかも知っていた。しかし、ワールドカップで味わうそれは、まったくの別物だった。

「ワールドカップというだけでなく、自国での開催っていうのもあったと思います。取り巻く環境を含めて、それまでに経験した試合とは雰囲気がまったく違いました」

 明神は「FIFAアンセムを聞きながら(ピッチに)入場するところまでは、多少緊張していました」と、正直な心境を吐露する。

 だが、図らずも緊張を解いてくれたのは、自らのファーストプレーだった。

「キックオフ直後、高い位置から相手の左サイドバックにアプローチして、粘り強く対応してボールを奪うことができた。自分の得意な形で試合に入ることができたので、その後は90分間、まったく緊張することなくプレーできました」

 明神のボールハントで勢いづいたのは、自身だけではなかった。

「チーム全体として、高い位置でボールを奪うことも多かったと思いますし、それほど相手に(攻撃の)形を作られなかった。前半はプランどおり、いい戦いができていたと思います」

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