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日本中が熱狂した歴史的な一戦。明神智和が「サッカーの一番の醍醐味」を体験した代表のベストゲーム (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

 当時を懐かしむように笑みを浮かべる明神は、「今回、試合(ロシア戦)の映像をもう一回見てみたんですけど」と明かす。

「とにかく歓声がスゴくて。それがすべてを物語っている試合だったなと、改めて思いました」

 19年前の映像を見直し、明神は"意外な事実"にも気がついた。

「勝った興奮が記憶としてあったので、こうして冷静に振り返るまでは、なんというか......、日本がいい試合をして、ある程度ゲームを支配して勝ったという印象を持っていたんですけどね」

 明神はバツが悪そうに続ける。

「試合の内容で言えば、相手の決定機のほうが数多かったですし、1試合トータルで見た時、サッカー的にものすごく面白い試合をしていたかというと......。日本はあまりリスクを負わずに戦っていて、サッカーの中身で言うと、必ずしもレベルの高い試合ではなかったと思います」

 しかし、だからといって、記憶のなかにある重要な勝利が、色あせてしまうわけではない。

 日本中が燃え上がり、全国民の視線が注がれる。そんな大一番を改めて見直し、明神は当時のゾクゾクするような高揚感を思い出していた。

「あのスタジアムの雰囲気のなかで、相手のゴールへ向かう。自分たちのゴールを守る。そういうことを必死にやっていて、これこそがサッカーの一番の醍醐味なのかなとも思いました」

 そして、もうひとつ。画面のなかの自分たちが、意外なほどに冷静な立ち振る舞いを見せていたことも、新たな発見だった。

「得点のシーンは、(中田)浩二からヤナギ(柳沢敦)に縦パスが入って、落としたところにイナ(稲本)が走り込む、っていうところだけしか覚えていなくて、浩二にどうやってボールが行ったかは記憶にありませんでした。

 でも、ひとつ前を見てみると、FWに縦パスが入ってファールをもらって、相手がちょっと緩んだところで早くリスタートして、右サイドから(左サイドの)浩二へパスしている。

 あれだけの興奮状態にある試合でも、相手の一瞬のスキを突いていた。そういうことが、やっぱり勝負を分けるんだなって、冷静に試合を見直してみて思いましたね」

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