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日本中が熱狂した歴史的な一戦。明神智和が「サッカーの一番の醍醐味」を体験した代表のベストゲーム (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

 すると、後半に入ってほどなく、日本に待望のゴールが生まれる。

「やはり、先制点はものすごく大きかった。後半の早い時間にとれたことで、後々、少し気持ちが守備に回った部分は出ましたけど、最悪1失点しても引き分けで次の試合につなげられる。落ち着いてプレーできる要因になりました」

 後半51分、稲本潤一が決めた値千金のゴールは、このチームが長らく練習で取り組み、精度を高めてきた攻撃パターンによって生まれたものだった。

「後ろでパスをつなぎながら、FWに縦パスを入れる。そこに(中盤の選手が)前向きでサポートして、縦に速く攻撃するっていう練習はずっとやってきていたので。その形がきれいに出たと思います」

 その後は、グループ最強と目されていたロシアを相手に、日本は劣勢の展開を強いられた。「大ピンチもありましたし、後半は日本の運動量が徐々に落ちてきて、ボールをとられる。前に行けない。そういうシーンがだんだんと増えてきました」。

 ただ不思議と、明神にはそれほど追い詰められた記憶が残っていない。

「『ヤバい!』っていう感じにはならなかったですね。それはおそらく、お客さんのボルテージが上がっているなかで、スタジアムの雰囲気がすべてをいい方向へ変えていた、というのもあったと思います」

 そこでは、ベルギー戦での反省も生かされていた。

「ベルギー戦の(2-1から同点に追いつかれた)2失点目は、オフサイドトラップでラインを上げたところで裏をとられたんですけど、ロシア戦までの間、特にそのシーンについては選手間で話し合いました。

 トルシエ監督は結構『(DFラインを)上げろ!』って言うんですけど、そこはピッチのなかの選手たちで判断して、前から奪いにはいくけれど、ただただラインを上げるんじゃなくて、危ないのであればラインを下げるべきだ、と」

 結局、試合はそのまま1-0で終了。日本は虎の子の1点を守り切った。

「1試合目に引き分けて、2試合目に僕が代わって出て、もし負けるようなことがあれば、やはり自分が出て負けたという責任をものすごく感じたと思います。なので、もちろん勝ってうれしかったんですけど、それよりもホッとしたっていうのが一番でした」

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