「怒りが収まらない」三都主アレサンドロ。今でも忘れられない日本代表の試合とは? (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Press Association/AFLO

 周りの選手も、『アレックスはスピードがある選手だから、ボールを渡せばどんどんドリブルしていくだろう』とわかってくれるし、僕も、例えばヒデ(中田英寿)とか、(小野)伸二とかがボールを持つと、『こういうパスを出してくれるだろう』ってわかる。やりやすさはありました」

 反撃に出る日本が、最もゴールに近づいたのは前半43分のことだ。

 縦パスを胸で収めようとした中田英がペナルティーアーク付近で後ろから倒され、日本は絶好の位置でFKを得た。

「なんで僕、あんなに強気だったんだろうなって、今でも思うんですけどね」

 三都主が苦笑いで振り返るシーンである。

「なんか、すごくノッていたんで。あの場面では、これを蹴ったら絶対入りそうな気がしたんです。あまり当たっていなかったら、たぶんヒデとか、右足で蹴る選手に任せていたと思うけど、なんかイケる気がして。

 それであの時、ヒデに『絶対オレに蹴らせろ』って、僕はかなり言っているんです。(中田英がキッカーを主張しても)『いやいや、オレ、オレ』って。もしかしてヒデが蹴っていたら、入っていたかもしれないけど(苦笑)」

 中田英との"争奪戦"を制した三都主。自信を持って左足を振ると、放たれたシュートはスピードにのってゴールへ向かった。

 同点か――。誰もが期待を抱いたその瞬間、動けず見送るしかなかったGKの視線の先で、ボールは無情にもクロスバーに弾かれた。

 それでも、「惜しいところまではいっていたし、あとちょっとだった。チームとしても、絶対に点をとれるっていう雰囲気はあった」。1点のビハインドで前半を終えることにはなったが、感触は悪くなかった。

「いい流れで前半が終わったので、『イケる!』と思っていました。自分では調子がいいと思っていたんですけどね(苦笑)。でも自分には、もうチャンスがなかったんです......」

 迎えたハーフタイム。選手たちがロッカーに戻ると、トルシエ監督が後半開始からの選手交代を告げた。

 ベンチに退くのは、三都主だった。

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