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谷晃生が東京五輪で学んだ代表GKの重み「日本のゴールを守ることがどういうことか理解できていなかった」 (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 間違いなく、チームを勝たせるGKのプレーだった。

 それは、谷が追い求めている姿でもあった。

 3カ月が経とうとする今も、谷の脳裏に焼きついて離れない場面がある。0−1で敗れた東京オリンピック準決勝のスペイン戦だ。

「失点したシーンは、今も鮮明に覚えています。スペインはボールを持った時に急いで攻めてこなかったんですよね。自分たちでボールを持って動かしてくる。それをされるだけでも、僕らはすごく消耗させられた。でも、時にはスローインから素早くリスタートして攻めてくる。ゲームを作るうえでの緩急がありました」

 延長に突入した115分、マルコ・アセンシオに得点を許した場面がまさにそれだった。

「大会を通じて感じたのは、自分たちのほうが相手よりも疲弊してしまっていた、ということでした。自分自身も、体というよりも頭というか、マインドのところをうまく切り替えて戦わなければいけないということは、あの連戦を経験して強く思いました。

 世界との差を言葉で説明するのは難しいですが、スペインとは親善試合で、メキシコとはグループステージで戦っていた。1回戦っても、2回戦っても、研究されても、特長を理解されていても、上回れるだけの引き出しを持っていなければならない。それ以上に大会を通して見れば、90分間で決着をつける力も必要だったと、僕は思っています」

 悔しさは今も色褪せることはない。一方で、ピッチに立ったことで見えた景色もあった。

「ここ数年、五輪に出場することを自分の目標としていたなかで、いざあの舞台に立ったら、やっぱり自分のサッカーキャリアをかけて戦うだけの価値がある大会だったと感じました。一方で、目標を実現しても、一切の満足感を得られていないのは、(準決勝の)スペイン戦、(3位決定戦の)メキシコ戦での悔しさがそうさせてくれないというか。あの悔しさが今の原動力になっています」

 東京オリンピックでは苦さを味わっただけでなく、接した人から学び、吸収した。それが人としての、選手としての厚みと重みになっている。GKコーチとして大会期間中に指導を受けた川口能活である。

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