水沼貴史が選ぶ「歴代日本人クロスの名手トップ10」中田英寿が上位に! (3ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko

◆加地亮が選ぶ日本人SBベスト10。内田篤人や長友佑都より強烈な選手がいた>>

5位 内田篤人(元鹿島アントラーズほか)

 ウッチーは、グラウンダーで針の穴を通すようなクロスを入れるイメージが強い選手です。オーバーラップして、ワンタッチで入れる場合もあるけど、一度止めて、そこからグラウンダーのクロスを入れるのがものすごくうまい。相手の守備の隙間を見つけることに長けた選手です。

 鹿島の歴代右サイドバックには、ジョルジーニョや名良橋など名手が多く、彼らのようなイメージであげるクロスはウッチーも覚えたと思うんです。でもそこからドイツのシャルケに行って、それまでのクロスだと相手の高さもあるし、強さもあるので通らない。「じゃあどこを通せばいいの?」となった時に「上はコースないけど、下なら少しある」。その隙間を通すために、速いグラウンダーのクロスを覚えたんだと思いますね。

 そうした経験から、先の展開を見据えてプレーができる選手になっていきました。先が見えることが彼に落ち着きを与え、クロスの場面でも冷静に「あそこを通せばいい」という判断ができる。中の状況によって素早く判断を変え、最適なクロスを選択できる。さらにキックの質も高いので、多くのチャンスをつくってきました。

 また「ここを通せる」というのが見えることで、守備の時にも「ここを通してくるだろう」と、コースへのカバーが素早く判断できるようになっていました。

 攻守に先を見据え、良い展開も悪い展開も素早く気づけるようになった。引退会見で「気づいているけど、そこに行けなくなった」と言ったのは、まさにその点を象徴した言葉だったと思います。

4位 酒井宏樹(浦和レッズ)

 酒井はヨーロッパに渡る前に、柏レイソルでレアンドロ・ドミンゲス(ブラジル)との関係でオーバーラップを覚えました。そして彼のパスからワンタッチであげるクロスを覚え、その精度が高かった。

 オーバーラップで上がってくるまでは、あまり自分の力を使っていない状態で、パスが出た瞬間にグッとギアが上がって最終的にクロスのところに集中できる。一度コントロールしてから蹴るパターンもありますが、彼は流れているボールをそのまま蹴る技術に長けた選手です。

 ヨーロッパに行ってからはそれだけではなくて、前に行って自分から仕掛けるプレーも覚えなくてはいけない。深いところまでえぐって、マイナス方向のクロスというのも必要になりました。それらを覚えてプレーの幅もかなり広がりましたね。

 加えて、フランスではパリ・サンジェルマンのネイマールやキリアン・エムバペはもちろん、速いアタッカーやウインガーがゴロゴロいて、そうした相手との対戦を重ねて、柔軟に対応できるような体の使い方を覚えました。それは攻撃面にも生かされていて、サイドで仕掛ける局面にもつながっていると思います。

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