水沼貴史が選ぶ「歴代日本人クロスの名手トップ10」中田英寿が上位に! (5ページ目)
これまでクロスから数々のゴールを演出してきた中村俊輔 photo by Getty Images1位 中村俊輔(横浜FC)
俊輔と聞いて、ピンとこない人もいるかもしれないですね。ただ、彼はフリーキックをはじめ、ドリブルやパスなど、あらゆる面で優れた能力を持っている選手で、ヨーロッパの舞台でもクロスで多くのチャンスをつくってきました。
アタッキングエリアに入って俊輔の左足前にボールがあれば、絶対にみんなが期待しますよね。そこで期待に応えるだけの技術があって、ピンポイントで蹴ることができます。場所によってはゴール前まで距離がある場合でも、調整できるだけの突出した技術を持っていると思います。
クロスでいちばん大事なのは、中の選手とタイミングを合わせること。それによって球の質も変える必要があります。つまり球種も色々と蹴り分けられる技術が求められるんです。
さらに味方に合わせるためには、どのタイミングで、どの球種で、どこに蹴るかという判断が伴わないといけません。キックのうまい選手はたくさんいるけど、それが独りよがりではなく、中の選手にしっかりと合わせられるのが優れたクロッサーだと思います。
味方に向かって蹴るのか、スペースに蹴るのか。それがニアなのか、ファーなのか、中央なのか。アーリークロスのようにプラス方向に蹴るのか、マイナス方向に蹴るのか。直接シュートを打たせるようなクロスではなく、一度折り返しからのセカンドボールを狙わせるクロスを配球するのか。クロスと言ってもさまざまなシチュエーションがあります。
こうしたクロスの場面が、試合中何回あるかというと、相当押し込んでいない限り10回もありません。だから拮抗した試合では、クロス1回でチャンスをつくれるか、2回で1回つくれるか、3回で2回つくれるか...。クロスの質は、こうした考え方に関わってくるわけです。
俊輔はクロスにおいての技術、アイデア、球質、ボールを落とす場所、すべてにおいて能力が高く、そのなかでチャンスをつくるクオリティが最も優れた選手だと思います。
水沼貴史
みずぬま・たかし/1960年5月28日生まれ。埼玉県出身。浦和南高校、法政大学で全国優勝を経験。JSL日産自動車でも数々のタイトルを獲得し、チームの黄金時代を築いた。日本代表では国際Aマッチ32試合出場7ゴール。Jリーグスタート時は横浜マリノスで3シーズンプレー。引退後は、横浜F・マリノスのコーチや監督を務めた。現在は解説者として活躍中。
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