水沼貴史が選ぶ「歴代日本人クロスの名手トップ10」中田英寿が上位に! (4ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko

3位 長友佑都(マルセイユ)

 長友は左サイドで自分の仕掛ける形をつくったことがすばらしいですよね。右足で突っかけながら、ボールをクッと縦に持ち出していく。それも相手から逃げるようにやや左斜めに持ち出して、そこから左足のクロスを入れるのが長友の形です。

 ここで相手に近寄りすぎないのがポイントです。彼の仕掛けは、相手を抜くのが目的ではありません。クロスをあげるための、時間と空間をつくるために仕掛ける。縦に行く時に相手から離れてある程度距離ができれば、そこから相手が寄せようと思ってもその間にクロスをあげられる時間や間合いが十分にできるんです。

 相手に近寄りすぎると、クロスをブロックされる可能性があるし、相手を抜き切らないとクロスをあげられない状況が出てきてしまいます。

 このクロスをあげるために特化した、長友の仕掛けの形は秀逸です。

 同じような形からのクロスが、クラブや日本代表で何度もあります。あれだけ繰り返していれば対策されてブロックされそうなものだけど、相手の足に当たっている場面がほとんどない。それだけ相手との間合いをちゃんと把握して、あの形に昇華されているわけで、ものすごい技術だと思います。

2位 中田英寿(元ローマほか)

 ヒデはサイドに深く入ることはあまりなかったですけど、早いタイミングで斜め後ろから入れるクロスが非常にうまかったですね。「今だ」という最適なタイミングを逃さない選手でした。

 クロッサーのイメージはないと思いますが、合わせるボールとなるとものすごいクオリティがありました。印象的なもので言うと、98年フランスW杯予選のジョホールバルでのイラン戦で、城彰二に合わせて同点に追いついたクロスがあります。

 ああいったタイミングを絶対に逃さずに、正確なクロスを入れるだけの技術と判断力、眼がヒデにはありました。

 ボールスピードとか、パススピードなども、今では当たり前のことだけど、日本人で最初にそれを意識させたのはヒデなんですよね。闇雲にボールスピードが速いパスというわけではなくて、速いパスを出したほうがビッグチャンスになるとの判断が伴っているわけです。

 イタリアのペルージャやローマ、パルマで活躍して、そのなかで身につけてきたものも当然あると思います。当時、セリエAが世界最高峰と言われていた時代で、その環境で揉まれ、適応できる技術を身につけていったと思います。

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