ベトナム戦の内容ではイランに通用しない。データが示す森保Jの低調ぶり (2ページ目)
毎度のことながら、この試合においてもスタメン編成について議論の余地はある。準決勝で強豪イランと対戦すると考えても、このベトナム戦ではスタメン数人を入れ替えるのが妥当だが、しかしこの試合でも指揮官はAチームの編成を貫いた。
試合後にその理由を問われた森保監督は、「(中2日で)トレーニングができない状況だったので、サウジアラビア戦での良い連係を持続することが最善だと考えた」と答えているが、ここまでくると、それは建前のコメントにしか受け止められない。
おそらく森保監督は、大会前からAチームでアジアカップを戦い抜くと決めていたのだろう。その穏やかな人柄とは裏腹に、心に秘めた信念は絶対に曲げないそのパーソナリティから推測すれば、そう考えるのが妥当だ。次の準決勝イラン戦でもAチームでスタメンを組むはずで、もし大迫のスタメン起用が難しいようなら、そこには出場停止明けの武藤を復帰させ、それ以外の10人はベトナム戦と同じメンバーが予想される。
一方、グループ3位でグループリーグを突破し、ラウンド16では120分の激闘の末にPK戦でヨルダンを破ったベトナムは、その試合とまったく同じメンバーをスタメンに起用。システムも同じ5-4-1という守備的布陣だった。
ヨルダン戦との唯一の違いは、試合開始から約10分間、2列目右サイドに16番(ド・フン・ズン)が位置し、19番(グエン・クアン・ハイ)が右インサイドハーフでプレーしていた点だ。ただし、それ以降は2人の位置を入れ替えて通常のポジションに戻ったことを考えると、日本の左サイドを惑わすための牽制的な意味合いが強かったと思われる。
果たして、日本のキックオフで始まった前半は、いつものように吉田麻也(サウサンプトン)からサイドへのロングフィードで幕を開けると、日本が望まざる展開が待っていた。
ベトナムの狙いははっきりしていた。中間ポジションをとる日本の両ウイング、そして両サイドバックの上がりを5バックがしっかりケアし、2列目4枚は左右にスライドして日本のボランチやセンターバックから前線に入れる縦パスのコースを封じる。そして、ボールを奪ったら、サイドに流れる1トップを起点に速攻を仕掛けてきた。それは、トルクメニスタンとよく似た日本対策だった。
そんなベトナムに対し、日本の前半のボール支配率は69.2%を記録している。もちろん出場チーム中、もっとも低い平均ボール支配率(48.6%)を記録するベトナムにとってそれは想定内。つまり試合の構図は、日本がボールを握り、ベトナムが引いて守ってカウンターを狙うという展開となった。
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